2011.06.01 のニュース
菅総理の自然エネルギー構想
菅首相は25日、パリのOECD設立50周年の記念事業の場で「自然エネルギーを2020年の早い時期に発電量の20%以上とする」と、わが国の数値目標を発表した。さらに「国内1000万戸の家屋の屋根に太陽パネルを設置する」と述べた。その後、27日の仏ドービルで開催されたG8は、日本の福島・原発事故の教訓を受けて新たな安全基準の策定をIAEA(国際原子力機構)に要請することの宣言を採択して閉会した。
今回のG8では、福島原発による日本の取り組み方に対しての反応などが注目されたが、日本の復興に向けて連帯する姿勢が確認された。菅総理は世界に向けて自然エネルギーの開発の促進を確約し、自然エネルギー対策については、先進国であるドイツとの首脳会議で、共同で取り組むことが決まった。
この自然エネルギー20%確保の発言は国際公約となるため、今後は国内でも議論を呼ぶことになるが、太陽光、風力発電などの導入を一気に促進させる施策が実施できるのか疑問視するむきも多い。鳩山前総理の掲げたCO2など25%削減の中期目標と同じような公約となりかねないとの批判も出ている。25%削減を目標とした温暖化対策基本法は、大震災、原発事故もあって審議は中断している。
今回の菅首相の発言に対して海江田経産大臣は「太陽光パネル1000万戸の設置の話は知らない」と述べており、事前に調整されたものではなく、突如、出てきた方針に戸惑いをみせている。
太陽光発電は、すでに実用化されているが、発電規模が小さくてコストが高く商業化は難しいとされている。太陽光発電は、石油各社も取り組んでいるが先行投資の段階であり、これからの新規事業として推進する部門である。昭和シェル石油は太陽光パネルの製造から販売までを手がけており、海外にも進出している。しかし、国内での導入を促進するには国の支援が必要とされている。環境にやさしいエネルギーとして評価されているが、普及はこれからである。環境、節電対策としては有力であるが家庭用の電灯などの小規模の電力をカバーできるが、大工場などベース電力をカバーすることは不可能であるため限界もある。
今後の技術開発に期待がかかるが、大規模発電となると広い休耕地や高台に設置することになり、膨大な用地とコストが必要となり、コスト負担のあり方が今後の問題となる。
過去においてはオイルショック後にサンシャイン計画として実施されたが高コストで普及せず断念、その後はドイツで普及した経緯がある。日本もドイツに追随して電力買取り制、設置費の補助で実施する計画がスタートした直後である。
だが、大規模な太陽光発電となると用地の確保、設置のためのコストに巨額資金が必要となる。太陽光発電の電力は電力会社が全量買取り制度で推進することになっている。そのコストは一義的には電力会社が負担するが、コスト負担には限界があり、電力料金の値上げとなる。最終的には消費者(国民)が負担することになる。政府が補助金を支給することになれば、財源は税金となり、これも国民の負担となる。いずれも予算、制度設計など抜本的な見直しが必要となる。