2011.06.02 のニュース
偽装が疑われる仕切りベース
本紙推計の2010年度(4~3月)の陸上出荷換算のガソリン精製元売粗利は前年度比でキロリットル3600円良化した。この粗利良化と同年度ガソリン内需5820万KLを用いた精製元売の収益良化の総額が2095億円になる。ガソリン全量が陸上業転で取引されたとしても、この金額の収益良化か果たされた計算で、系列に対する仕切りフォーミュラの変更による収益は、さらにかさ上げされる。
このガソリン内需の、仮に9割が系列取引が占めるとすると、「系列」5238万KL、「その他」582万KLに分類される。「系列」が「その他」に対して、仮に3円割高に元売に支払ったとすると、その総額は1571億円になる。これに冒頭で弾き出した2095億円を加えると、その総額は3666億円。
決算が出揃ったガソリン合計シェア60%の3月期大手3社。その精製販売部門の在庫評価影響を除く真水の収益良化は、合計5059億円になる。前記の3666億円の60%は2200億円となるから、真水の良化の5059億円のうち2200億円をガソリン内需から、2200億円のうち950億円ほどをフォーミュラ変更によって、系列から上乗せ回収できた、ということとなる。
ガソリン卸価格指標となり得る他の指標の年度変化を比較する。中東産原油見合いで「海外市況」はキロリットル710円良化、「国内海上」渡しは3060円良化、東京工業品取引所(京浜海上渡し)の「先物」最期万物は2730円良化。系列SS仕切りの唯一の拠り所となった「陸上連動が、最もメーカー有利に化け、さらにフォーミュラ変更が加わって大化けしたのだ。
ここに内需不振という市場原理を付加すると、通常は「陸上安」となり、これが最もメーカー不利となる指標となるはずだが、実は異なる結果が出た。当然、比較対象となる09年度が、極度な不振を象徴する「陸上安」に見舞われたことの反動という部分はある。ところが、さらにこれとは異なる差別、格差を生む現象か生じている。それは陸上取引では業転レス、という偽装取引が半ば常態化して出現しており、そのレス幅が拡大傾向にあることだ。
業転を起点とする「系列」と、偽装を施されて最恵国待遇を受けるPB大手との格差が著しく大きく感じられるのは、このことを映しているからなのだろう。