2011.06.06 のニュース
緊急時に備えて安定供給策検討 ―コスト負担、国か業界かを議論―
東日本大震災を機に、改めて石油製品のサプライチェーン維持の重要性が認識された。そのため、緊急時に備えて平時から石油の供給網を整備すべきであるが、その整備、予備を備えた施設の建設、また維持するためのコストを誰が負担するかが今後の議論となる。業界が負担するのか、国、地方自治体が負担するのか、来年度の新政策、予算要求の目玉策となるため、石油業界でも検討に入っている。
天坊・石油連盟会長は「大震災で電気、ガスが止まっても消費者からの文句は出ない。しかし、ガソリン、灯油などの石油製品が供給不足となると、石油業界に対して供給を求めることになり、社会問題となった」と述べている。大震災はSSにユーザーが殺到して大混乱となった。裏を返せば、いかに石油製品が重要であるかを実証していることになるが、平時から安定供給のためにコストを負担して整備することが重要となる。
政府はエネルギー基本計画の見直しを検討するが、まず、原発推進の方向を転換することになる。この原発政策を見直しする際に、石油政策も当然見直しの対象となる。
安定供給策の事例としては、SSの過疎化問題、コスト高でガソリンなどの販売価格が高値となる離島対策などが検討され実施されている。離島対策は今年度から実施となって
いるが、ガソリンの値下げ販売を行なう場合、その地域の事態に合わせて7円/L、10円、15円に設定して補助している。また、SSの修繕費、設備導入に際しても補助している。予算は31億円か計上されている。油槽所の設置には、すでに補助が行なわれている。
SSの過疎化対策は地域にとっては深刻な問題であり、SSの減少で供給が難しくなっており、町や村でSSを運営するケースも出ている。これらの問題は、平時でも一部地域で発生している住民対策となる。
いずれもSSが大幅に減少したことが要因である。自由化の進展で合理化、効率化が求められ、不採算SSの早期撤退を誘導した結果である。元売もSSが多すぎるとして、SS減らしに租極的に取り組んだ。同時にセルフ時代の到来と重なり、SS数は6万SSから4万SSを割るところまで激減した。これは石油流通の問題であり、同じことは精製・油槽所・輸送・SSと繋がるサプライチェーン全体の維持が改めて問題となってきたといえる。
元売・精製段階でも、自由化と需要の大幅な減少で精製設備、油槽所、内航タンカーなどが処理されてきた。コスト競争力を維持するには、余分な設備を廃棄することが経営方針のポイントとなった。だが、行過ぎた合理化は緊急時には、一気に供給不足となり混乱が発生することが今回の大震災で実証された。そのため、緊急時に備えて平時から余力、予備の設備を持つことが求められる。緊急時に備えての石油製品の備蓄、供給に際しての機器の備蓄も必要となる。業界として再投資が可能な適正利益が計上できる仕組みを作るべきである。本来は国が安定供給策を実施すべきだが財源はない。国が実施するとなると税金(石油税の増税など)となるため、単に国に助成を求めると、石油業界が負担することになることも予想されるため、慎重な検討が必要となる。