2011.06.09 のニュース
公取委 不当廉売の注意714件 ―安値販売の抑制効果発揮せず―
公正取引委員会は平成22年度の独禁法違反事件の処理状況をまとめた。うち不当廉売につながる恐れがあるとしての「注意」件数は石油製品が714件となった。前年が956件となっており、242件の減少であるが、714件は多い。不当廉売として石油販売業者が申告(訴え)している件数は、その数倍あるとみられてぃる。
さらに多いのは酒類で1028件、家電製品が856件、その他が102件で合計で2700件となっている。不当廉売に係わる申告数は8675件となっており、注意の約3倍となっている。この3業種での価格競争がいかに激しいかを証明している。酒屋、SSは自由化によって安値販売が展開され、その結果、店舗数は減少し、廃業、倒産も増加している。
独禁法の違反に対しては、法的措置(課徴金、排除命令)、警告(違反の疑いあり)、注意、となっている。「注意」とは、『違法行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、将来違反につながる恐れがある場合』」としており、シロでなくクロでもないグレイゾーンを指しており、ペナルティの対象ではない。そのため、何回「注意」を受けても、制裁の対象にならず、販売姿勢が改善されず意味がないという反発が出ている。安値販売を抑制する効果は発揮されていないことになる。
サッカーや柔道のように『注意』を何回受けたら退場、減点などのルールを設けるべきとの声も出ているが、今回の独禁法の運用強化か、市況の改善に寄与することを期待したが、空振りとなったようである。
不当廉売についての運用強化で「中小業者に不利益をあたえる行為を未然に防止するため、申請があった後、原則2ヵ月以内に調査、不利益が生じる前に問題のみられる事業者に注意する」ことになったものである。運用が厳しくなり、申請後2ヵ月で調査となったことに販売業者も歓迎した。当初は安値販売のHC、量販店などに対して多くの申請が出た。しかし、公取委の見解は注意が限界で、安売が改善されることはなく、最近ではあきらめムードが多くなってきた。
不当廉売の対象になるケースは、ほとんど実証されていない。現在も130円割れが散見しており、この販売価格は仕切価格をも下回る水準であるが、HCなどの仕入れ価格(業転価格)は安く、仕入れ価格を下回ることはないため不当廉売に該当しない。一方、仕入れ価格が安値とされているが、これも安い業転市況が基準であるため、差別対価で独禁法に違反したケースはない。安値販売に対して裁判に持ち込んだケースもあるが、結果的には負けることになり、今のところ打つ手がないのが実態である。独禁法も販売カルテルなどの違反に対しては法的措置が講じられるが、不当廉売を実証することは難しい。安値販売業者も独禁法をよく研究し、ギリギリで対応している。
そのため元売に対して安値の業転玉を売り出すことを自粛するよう要請している。これも各社の事情もあり、大幅な販売減に直ちに対応できず、供給増となり業転市場へ売りに出る元売もある。不足している元売は、買いに出るが、タイミングが合わずに市況が下落している。大震災後は、販売数量が大幅に減少しており、需給調整が難しくなってきた。