2011.06.10 のニュース
販売減続くも唯一の増販はC重油 ―製品輸出を狙うが難しい需給調整―
石油製品の販売数量は減少が続いているが、今後は一層加速する見通しとなってきた。東日本大震災を機に、日本経済は大きく後退するとの見方から石油製品の販売数量は大幅に減少すると予想されている。一方、電力C重油は増販となるため、石油製品の需給調整が焦点となる。ピーク時の発電の最後の砦が石油火力となるため、石油業界としても供給責任が求められる。
平成22年度の石油製品販売は、猛暑と厳冬景気の回復で前年度比で0.5%増となり8年ぶりのプラスに転じた。しかし、大震災で東北地区の経済が壊滅的な被害を受け、立ち直りには時間がかかるため今後は減販が続く。とくに福島原発の事故は収束の目途がつかない状況にあり、経産省でも23年度の石油製品の需要見通しの策定を見合わせており、緊急事態が続いている。緊急事態が解除となるのは福島原発の放射性物質の洩れが完全に止まった時点となる。
5月の景気動向は前月の落ち込みに比べると改善しているが、元に戻るには時間がかかる。石油製品の3月の国内販売は、前年比で5.3%減(ガソリンは4.5%減)、4月は12%減(ガソリンも同じく12%減)となっており、5~6月も大幅な減販が見込まれている。今後は夏場の天候が大きく影響するが、ガソリンはユーザーの節約志向が強く減販は必至である。唯一増販が見込まれるのが電力用C重油である。4月販売をみても、C重油だけは2.4%の増販となり、他油種は軒並み減販となっている。
C重油が増販となれば、原油処理も増加して稼動率が維持できるが、C重油を増産すると、ガソリン・中間留分か供給過剰となり、市況が下落することになる。
東電向けのC重油特需が発生して、石油業界も歓迎するが、一方では、ガソリンなどの市況下落となるマイナスが見込まれ、痛し痒しという状況にある。供給増となるガソリン・中間留分を輸出に回すことで対応しているが、輪出は海外市況と絡むため、海外市況が下落すれば赤字となる。輸出増だけで解決するような簡単な問題ではない。
そのため平時から一定数量を確保するよう電力業界に要請しているが、C重油がコスト高であり、脱石油政策により石油の消費を抑えた結果、電源構成比では石油は7%に減少した。80年は45%、90年が30%であったのに比べると09年は7%と大幅な減である。足元は原発、LNGで各29%(09年)、石炭が25%、水力が8%で、石油は水力よりも低い7%となり、脱石油電源が推進されてきた。石油火力の新設、増設はなく、今後は休止しているものを再稼動することになる。その結果、点検作業にも時間もかかるため実際の石油オーダーは遅れている。
電力企業がC重油を大幅に削減したため、石油業界は重油用の内航タンカーも廃船しており、供給にも支障が生じている。電力側も当面はLNGにシフトしており、世界で供給余力もあるため数量は確保している。
政府は15%節電対策で今夏を乗り切る方針であるが、電力の場合は蓄電ができず常に余剰を持つ必要があり、夏場のピーク電力時を乗り切ることができるかが焦点となる。ギリギリの供給となると、最後の頼りは石油火力となるため、石油業界の供給責任も重要となってくる。