日刊ニュース

2011.06.24 のニュース

WTIは指標として通用せず ―中東やブレントと大幅な価格差―

 原油価格はWTIでみると93ドル/バーレルと100ドルを割って急落している。5月の平均は101ドルであったのに比べると8ドルの下落となる。WTIが世界の先物市況の指標として役割を果たしてきたが、最近はアメリカの国内の石油需給、景気動向を反映した指標となり、世界では通用しなくなってきた。現に、ブレントは112ドル、中東産は107ドルで推移しており、100ドル台の高値である。以前はWTIが高値であったが、安値となり逆転している。そのためブレントがWTIに代わって指標として採用されている。WTIは、相場づくりで先行するが、あくまでも目安という見方となっている。
 WTIは、08年の急騰時には、金融商品化され実需を反映したものでなく、バブルであるとの批判が出て、石油先物取引規制が強化されたこともあるが、最近はアメリカのローカル市況となってきた。それでもWTIの値動きが、一般的にはまだ世界の指標として把握されている。
 WTIは、先物の市場で取引きされているため公正な市況となるが、北アフリカ、中東の情勢などには反応が遅れるため、市況実態と乖離することになり、ブレント、中東産と
の間には15~20ドルの大幅な価格差が生じてきた。日本に輸入される原油価格は中東産に油単するため、見定めが大切である。
 原油市況は、WTIの相場が先行、1日遅れて中東産が連動して形成されている。価格水準はWTIが安値であるが、変動幅はWTIに連動することになる。時差あり、東工取の原油価格(中東産)もWTIの1日遅れで形成されている。相場はドル/バーレルをKL/円で換算することで取引きされるが、出来高も低調である。
 東工取は、アジアの先物市場をリードすることを目的として発足したが、国内の景気回復の遅れもあって低調であり、決算は赤字が続いている。
 そのため国内の販売業者もWTIをみて対応すると、大幅に変動する場合は戸惑いが生じるケースも出ている。最近はWTIが急落しているが、中東産は堅調で推移しているた
め、仕切価格は値下がりしないケースも多い。WTIの下落相場を先取りして末端市況を値下げすると仕切価格が値下げされない場合は赤字となる。販売業者も原油価格、業転市
況を参考にして商戦に臨んでいるが、WTIの値動きだけではなく、国内の需給などを良くみないと、思惑が外れて失敗する。
 足元はWTIが97ドルに急落しているが、逆に仕切価格は値上がりとなっている。これは中東産が107ドルと100ドル台の高値を堅持しているためである。業転市況も減産と元売の市中買いで需給がタイトとなっており、とくにバージ物(海上物)が急騰して
いる。バージ物は130円/Lと高値であり、仕切価格をも上回っている。市中買いは逆ザヤとなり赤字で系列SSに供給しているため、元売は仕切価格の値上げを実施している。バージ高に連動してローリーも値上がりするため、双方の価格差は縮小される。
 ただ、WTIの下落が続くと、いずれは中東産も値下がりすることが予想されるため、今後の見通しは難しくなっている。現在、ガソリンはユーザー転嫁の最中であるため、原油価格がさらに値下がりすると市況維持は難しくなる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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