日刊ニュース

2011.06.27 のニュース

もう一度、教訓を生かせ

 政権交代によって新政府が始めた予算のムダの切り捨てのための事業仕分け。これが評判を呼んだことから各省が自ら行うようにさせた行政事業レビュー。昨年5月の経産省行
政事業レビューで、石油販売業界の災害対応型給油所普及事業が存続を問われた。経産省版仕分けとはいうものの、行政刷新会議の事業仕分けと同様に外部有識者が補助事業のあり方に注文をつけ、ばっさばっさと「廃止」の評決を突きつける。
 災害対応型SSについては「なぜこの業界だけに国が補助をしなければならないのか」と指摘された。担当課の石油流通課が、この支援制度は阪神大震災を教訓にスタートした
ものであり、災害対応型SSとして機能するためには自家発電設備などハード面の負担が大きいから支援していると説明した。にもかかわらず有識者のほとんどが「廃止」と評価し、副大臣による最終取りまとめで「抜本的な改善」の評決となった。実際に今年度からは名前を「緊急時安定供給拠点整備事業」に変え、中身もSSが国や自治体などと密接に連携しているものを支援する制度となり、予算も大幅削減された。
 災害対応型SS普及事業は1996年度にスタートした。前年の1月17日に発生した阪神大震災で、電気やガスなどのライフラインがマヒする中、堅牢な構造のSSは損害が小さく、緊急車両への燃料供給や被災者の暖房用需要に応えるなどエネルギー供給拠点として重要な役割を果たした。その教訓から自家発電設備や貯水槽を備えようとするSSに一定の補助をするという制度が導入された。
 制度導入から15年で全国に270力所の災害対応SSが整備された。今回の東日本大震災では、3月13日時点で東北6県の33力所の災害対応型SSのうち20力所が稼働し、救急車などへの給油に務めた。この災害対応型SSがなかったらどうなっていたのだろう。手回し給油で頑張ったところもあるが、緊急車両のみの必要量にも追いつかなかっただろう。燃料供給がすべてストップした時のことを思うと背筋が凍る。
 事業仕分けでは阪神大震災の教訓が無視されたが、今回の東日本大震災では皮肉なことに、その「なぜ国が補助するの」と問われた災害対応型SSが国の要請にも対応・活躍した。この教訓をもう一度生かすには、支援事業の早期復活しかない。

提供元:全国石油商業組合連合会
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