日刊ニュース

2011.06.29 のニュース

原発の再稼動が当面の課題 ―産業空洞化の防止が至上命題―

 産業構造審議会・産業競争力部会は22日に開催され「大震災後の専業競争力に関する課題と対応」(空洞化の危機を乗り越えるために)の中間とりまとめを行なった。産業空洞
化阻止のための政策提言を求めたとりまとめである。この中間とりまとめをもとに経産省では第3次補正予算、来年度の新政策、予算要求に取り組むことになる。
 大震災後の課題としては「産業空洞化の阻止」とし、①エネルギー政策(とくに原発の再稼動問題)、②サプライチェーンの強化、③立地競争力の強化、をあげている。また「成
長力の創出・強化」としては、①海外市場の開拓、②新たなビジネスの育成、③人材力・技術力の強化、を提示している。おわりに「戦略の具体化を早急に進め、必要な対策をスピード感を持って実行に移すことで、かつてない国難というべき国際競争力と産業空洞化の危機を克服すべきである」と結んでいる。『当面の課題である原発の再稼動問題は、定期点検は13ヵ月毎に実施となるため、地元の反対で再稼動ができなくなると、約1年後には全部(54基)の原発が停止することになる。その発電量は約4800万kWあり、電力需要の約30%を占める。再稼動ができないと、ほとんどの地域で電力が供給不足となる。仮に火力発電でカバーすると3兆円の発電コスト増となる。この発電コスト増は産業を通じて中間生産物の生産コストを押し上げることになり、トータルでは約7.6兆円/年となる。結果として電力料金の値上げとなり、産業界、最終的には国民の負担となる。コスト増は産業空洞化と海外移転を促進させることになる。国内の雇用問題にも発展する。
 海江田経産大臣も「原発の再稼動は震災からの復興、日本経済の再生には不可決である。原発の安全性について、私自身が立地地域を訪れ、説明して再稼動の理解を求め協力を得たい」と述べているように、浜岡原発の停止決定を機に、原発の停止を求めるムードが強まっているが、海江田大臣が地元知事、地元住民に安全であること説明して理解を得るよう努める。
 エネルギー政策の時間軸としては短期公儀1~2年後)では、原発事故の原因究明、安全確保策の見直しに加え、需給に万全を期すため、自家発電などの分散型電源の活用を進めるとしている。
 長期(10年後)には再生可能エネルギーなどの導入をあげているが、菅総理が提示している自然エネルギー(太陽光発電)の促進については、現実を無視した思いつきの発想であるとの批判が出ており、導入を拙速に決めるべきではない。太陽光発電の設置費、電力の全量買取り制はコスト増となり、電気料金の値上げとなる。最終的には国民の負担増となるが、海外などの実態をよく見定めるべきである、との意見も出ている。自然エネルギーの促進だけでは、地域電力の供給は確保できても、ベース電力をカバーすることはできないとの見方もあり、コスト増を誰が負担するかを冷静に考えて対応することが求められている。
 国会の延長は決まったが、菅首相の退陣の時期など政局問題が熊点となっており、この再生可能エネルギー法案などの審議は後回しとなり遅れていることが気がかりである。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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