日刊ニュース

2011.07.15 のニュース

直近の課題は原発の再稼動 ―菅内閣ではエネ政策見直し策の審議進まず―

 原発の再稼働に際して、国会で集中審議が行なわれていることもあり、本来のエネルギー政策の見直しの審議は進んでいない。見直しの議論は、総合エネルギー調査会で6月末から始まり、8月末には中間報告をまとめる予定であったが、審議の目安もついていない。前提としては、原発政策を決めるとが前提となる。原発の電源構成比は約30%であるが、政府の長期計画では、2030年までには、新設を14基増やし53%にまでに引き上げることなっている。今回の福島原発の事故で新設は難しくなった。だが、現在の原発をどこまで維持するのか、数値を示すことがポイントとなる。まずは、再稼働問題での方針の決定が先決となる。
 菅首相は、これまでの計画を白紙に戻して検討すべきである、としている。だが、菅首相は、すでに辞任を表明しており、新方針を打ち出しても、信頼性を欠くことになる。今
後、新内閣が発足となり、後任が誰になるのか、政策推進者の顔が見えない状況でエネルギー政策を策定することは難しい。
 今回の新安全評価基準を設けたことで再稼働が遅れることになる。地元で再開反対の迎動が発生することも予想されるなど停止状況が続くことになる。
 現在も稼働している原発は減少しており、原発に替わって、当面は石油、LNG、石炭の化石燃料でカバーすることになる。現在、東電は石油火力を立ち上げることになり、石
油(原油、C重油)を手当てしている。しかし、石油は割高であるのと、石油火力は、脱石油政策で石油火力の新増設を認めていないため、石油が増加する余地は少ない。そのため石油に比べて安いLNG、石炭にシフトしているのが実態である。石油業界は、困った時に石油に頼るのではなく、常に一定の数量を引き取るべきであると要望しているか、理解を得ることは難しい。
 また、菅首相が辞任の条件として成立を狙う再生可能エネルギー法(太陽光発電、風力、地熱など)は、現在は1%のシェアであり、これが原発に代わる電源になることはあり得ない。原発反対、脱原発を主張する環境派、市民団体などは太陽光発電の推進で原発をカバーできるとの意見が出ているが、現実を無視した理想論であり逆に混乱を招くことになる。
 菅首相は「1000万戸の家庭の屋根に太陽光パネルを設置する」としているが、現実に可能なのか問われている。人気取りの政策であるとの批判が出ている。設置のコストを誰が負担するのか、固定買取制も、最終的には電力料金が値上がり、国民が負担することになる。設置コストが国が負担すべきとの意見もあるが、国が負担するとなれば税金となるため、結局は、国民の負担となる。
 太陽光発電は、家庭用の電力をカバーできるが、産業用のベース電源をカバーすることはできない。しかし、技術開発が進み、原発をカバーできる電源となるとの予測もあるが簡単に、国のエネルギー供給源に取り込むのは問題であり、現実なエネルギー政策が求められる。この問題は短期、長期と分けて時間軸で考えるべきであり、太陽光発電は10年以上も先に話である。その意味では、直近の課題は、点検中の原発の再稼働問題である。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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