日刊ニュース

2011.07.19 のニュース

石油軽視の危機管理はNO

 東日本大震災を踏まえた低炭素社会づくりに向けて、環境省・中央環境審議会が議論を再開した。地球温暖化対策につながる最近の動きとしては、目下の節電があるか、そのほ
か復興構想会議は再生可能エネルギー(再エネ)の利用促進・エネルギー効率の向上を提言、日本再生に向けた新成長戦略実現会議は革新的エネルギー・環境戦略を検討する場としてエネルギー・環境会議を開催、先月日の初会合では従来の原子カエネ、化石エネに省エネと再エネを新たな柱に加え、エネルギー分散型システムの構築を目指すとした。
 一方、温暖化対策の主要3施策と位置付けられる地球温暖化対策税の石油石炭税への上乗せは今国会で未審議、国内排出量取引制度は慎重に検討とされており、再エネ全量固定価格買取制度は14日に法案審議に入った。
 環境行政にとっては、省エネ・再エネを加速化する大きな転機を迎えている。環境省が4月公表した再エネ導入ポテンシャル調査報告書は、非住宅系太陽光、風力、中小水力、地熱の各発電で相当量のポテンシャルがあるとしつつ、固定価格買取制度案の開始時想定価格・期間で買取された場合などには、特に東北地方で風力や地熱の事業収支が優良な地点か多いなどと推計した。
 一方、エネルギー・環境会議資料によると、原発が再稼働できない状態が続けば、約1年で全原発が停止する。土地利用の観点で福島第1原発と同等の発電量を確保するには、風力で34倍、太陽光は180倍の面積が必要となるそうだ。こうした中で環境大臣は「化石燃料への回帰は国益、地球益の観点から問題」と指摘、燃料の価格急騰見通しに基づく
莫大な国富流出、火力発電回帰による温暖化リスク増大などをあげ、再エネがもたらす雇用効果、自立分散型の災害への強さを訴えた。
 大震災前に提示されていた20年時点の原発新増設9基・設備利用率85%達成は、至難になった。それでも石油依存を高めることなく、再エネを突破口にエネルギー政策の大転換を図るという未来図は一見格好いいか、その間の安全保障はだれが担保するのか。20年、30年、50年の中長期ビジョンはさておき、いま発生するかも知れない大地震に備えることか危機管理の第一歩ではないのか。原発の政策論争に石油業界が振り回されるのは決して好ましくない。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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