日刊ニュース

2011.07.22 のニュース

新政策はサプライチェーンの確保 ―緊急時に備えて供給拠点を強化―

 来年度の新しい石油政策などを検討する時朗となったが、脱原発問題が取り上げられているためエネルギー計画見直しの審議も遅れている。定期点検後の原発が再稼働できるか
否かが決まらないと、短期的なエネルギー基本計画は策定もできない状況にある。
 本来ならば、総合エネルギー調査会で審議を始めるところであるが、前提となる原発問題が定まらないため、エネルギー全般の見直し作業も見送りとなっている。点検を終えた
原発の再稼働が地元の反対により困難となる状況下で、菅首相が、再稼働に際して、新評価基準を設ける、脱原発を目指すとの私的な見解を発表したことで、政局問題にまで発展した。この原発問題が収拾しないと、エネルギー政策見直しの検討ができない状況にあるが、来年度の新政策は8月末までに提示することになっており、残る時間は少なくなっている。経産省事務局ベースでは、これから作業に入る。
 石油政策は、今回の東日本大震災の経過からみて、石油の役割、重要性が一段と認識されている。天坊石油連盟会長は「エネルギー基本計画の中で石油の重要性を再確認すべき
である」と述べ、さらに「石油の安定供給ができる最低限必要なサプライチェーンを確保、維持することが重要な課題である」と強調している。
 精製・輸送からSSまでの整備を緊急時に備えて平時から取り組む必要がある。国が供給責任を果たすためにも実施すべきであるとしている。経産省ではSSの減少に伴う過疎地、離島対策などを実施しているが、災害に備えた供給体制の強化策は新政策に織り込むことになる。製油所、油槽所など供給拠点の強化、整備にも取り組むことになる。
 SSも災害対応型SSの増加、自家発電設備の普及などが推進される。これらの施策は国が支援することになり、予算要求される。しかし、SSの経営安定策、安定供給の強化
策は自助努力となり、そのためには、適正マージンの確保が求められる。
 精製・元売サイドでは、安定供給の責務と同時に過剰の処理に取り組むことになる。一部では製油所が停止しているが、全体では供給過剰である。大災害を機に石油需要は減少
傾同を強めているため、正常化を機に減産と輸出増で対応しており需給調整を行っているが、基本的には過剰設備であり、設備処理に取り組む。
 昨年はエネルギー供給高度化法が議論され、施行となった。各社は2013年度までの設備削減計画を提示したが、3月11日の東日本大震災で、製油所の操業が停止することになり、一時凍結との見方もあった。しかし経産省は予定通り実施するとしており、石油業界も震災があったからといって配慮すべきではないとの意見が大勢を占め、2013年度の目標に沿って設備を処理する。
 いずれにしても石油の一次エネルギー供給の占める比串は、石油ショック前の1973年度が77%であったものが50%を割り、2009年度では42%まで減少した。2030年度では36%と落ち込む予測だが、それでも石油は一次エネルギーのトップを占めることには変わりがない。石油の時代は今後も続くことになる。石油業界としては安定供給の責任を果たすためにも重要な役割を担っていることを自覚すべきである。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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