日刊ニュース

2011.07.27 のニュース

IEAの備蓄放出は効果なし

 IEAは21日、リビア情勢等による世界的な石油供給不足への対応として実施している、加盟国による協調行動に関し、現時点では追加の備蓄放出を行わないことを発表した。併せて年内までは石油備蓄の積み戻しを行わぬよう、現状の維持を要請した。
 IEAは原油価格の高騰を抑えるため6月23日に加盟国が全体で6000万バーレル(200万バーレル/日の30日分)の放出を発表した。その直後は、原油価格(WTI)は90ドル/バーレルに下落したが、その後再び値上がりし、最近では99ドルとなり、放出効果が見込まれず批判的な見方が出ている。だが、備蓄を放出しなければ原油価格は、さらに高騰していたとの見方もあり、その評価は難しい。
 この備蓄放出の決定を受けて経産省も民間備蓄の義務量を70日分から3日分引き下げ67日とした。今後も年末まで67日分を維持することになる。備蓄水準引き下げ後(7月2日時点と比べると約142万KL減少した。3日分の民間備蓄の義務量は約126万KLとなっており、3日相当分は減少したことになる。
 備畜法による備蓄放出は、紛争などで産油国から供給が途絶された場合に限られており、その場合は国家備蓄の放出となる。原油価格の高騰を理由に備蓄を放出することは認めていないため民間備蓄の義務数量を引き下げを認めたものである。IEAの協調行動に対応したことで、原油価格の引き下げ効果を期待したが、結果的には空振りに終わった。実際には備蓄放出で原油価格をコントロールすることが難しいことを実証したことになる。
 IEAの備蓄放出の布石は、原油価格が上昇、WTIで100ドル/バーレル超えが続き、アメリカのガソリンが値上がり、消費者物価が上昇、景気後退が心配され、原油価格の値下げを狙い、アメリカがサウジに増産を要請したもの。サウジもOPEC総会(6月8日)で増産を要請していたが、産油国の調整が不調に終わり、生産枠の据え置きが決定した。その対抗手段としてIEAは備蓄放出を決めたもの。IEAの備蓄放出を機に、WTIは90ドルに下落したが、再度、値上がりしている。IEAの備蓄放出に際しては、原油価格の高騰を理由に消費国が備蓄の放出をしても、その効果が薄いと産油国、石油市場関係者から反対する見方もあった。
 また、原油価格の指標であるWTIの価格水準そのものが、すでに指標としての役割を失っていることも問題となっている。中東産は110ドル台、ブレントは118ドル程度と高値で推移している。このようにWTIとブレントと比べると大幅な価格差が生じている。WTIはアメリカ国内の市況となり世界の原油価格の指標として通用しなくなっている。最近の原油価格の高騰はリビアなどアフリカの政情不安が影響しており、ヨーロッパの北海ブレントが急騰しているものである。一方、WTIの値動きは、アメリカ国内の石油需給、経済指標、景気動向を反映したものとなり、世界の原油価格とは、別の値動きを見せており大幅に乖離している。
 原油価格は、リビアの政情不安による減産、中国、インドの需要増などの需給状況で決まる要因もあるが、金融商品としての値動きするため、備蓄を放出して原油価格を抑えることは難しい。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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