2011.07.28 のニュース
卸に関わる2つの異常事態
原油が円建てでは61.9円だったゴールデンウイーク直前。SSのガソリン卸価格は126円前後で、消費税込みの小売価格は152.5円であった。それから約3ヵ月が経過し、円建てで56.1円となった原油に対しガソリン卸は126円を超える。原油が5円強、割安になっている一方で、卸は当時を超える水準に跳ね上がっている。
GW前の海外からのガソリン製品輸入コストは、3~5円もの海外高・国内安だった。当時の国内ガソリン在庫は、大震災による増産アクセルが効き過ぎ、国内市場が自粛蔓延
で冷え込み過ぎた影響が出て、大幅に積み上がり続けていた。つまり、国内の需給が緩んだ影響が顕著に出て、国内独歩安が出現した。
ところが最近のガソリン市況は、アジア市場をフォーカスすると6月中旬以降、最大12円、平均でも7円強の海外安・国内高が生じている。大震災直後のようにガソリンの国内需給が極めて厳しい状況に陥っている、という背景なら理解しやすいが、ガソリン在庫は平時の状況に対して、やや少な目というシグナルである。
海上高はいずれ陸上に転嫁される。異例に割高な国内ガソリン卸価格が生じることで、国内のSSは、アジアでも最も劣勢な卸価格環境化に置かれる。しかもその理由が極めて説明がしにくい。原油や需給見合いで、首を傾けざるを得ない国内ガソリン海上相場の独歩高が生じている。
もうひとつの異常事態は、卸と小売価格の相関関係である。SS卸が割高なまま放置されると、それは通常、小売価格を通じてお客様へ転嫁される。卸市況見合いで平均4円を持ち出しているSS小売の転嫁不足によって、卸独歩高の圧力か大きく減免されているが、平時でも粗利10円以下というSSも多い中で、そこから4円も減じられた粗利で経営可能なSSは存在しにくい。
GW前の原油、卸、小売の価格関係を、原油見合いでスライドさせると、卸の近況は121円弱、消費税込みのSS小売価格は147円台半ばとなるが、現状は卸は126円台半ば示売は150円に迫る。リムとか外販、先行指標という特殊用語が、原油や需給、海外市況よりも説得力を持つのは、元売と特約店、SS間の特殊な世界のみである。わかりにくい2つの異常事態は、なにによって生じているのか。SSにはこれをお客さまに説明し得る情報がない。