日刊ニュース

2011.09.07 のニュース

元売、灯油値上げを狙う ―流通在庫の積み増し時期に―

 3日からの仕切価格改定は、ガソリンが50~60銭/Lの値下げとなったが、灯油は70~90銭/Lの値上がりとなった。灯油の値上がりは、流通在庫の積み増しが始まり、相場づくりに取り組み、今までの下げ過ぎ分を是正することになったものである。灯油は、現在、不需要期であるため業転市況が61円/L程度に値下がりしているので、元売のマージンが少なくなっており、マージン確保のため、これから値上げに転じることになる。
 灯油は例年、夏場では値下がりするが、これから需要期に向けて値上がりする。11月頃になるとガソリンを上回り「灯油高のガソリン安」という価格体系へと逆転する。東工取の先物市況も、灯油は期近が63円/Lであるが、12月限は66円となっており先高となっている。一方、ガソリンは期近が66円であるが12月限は63円で先安となっている。
 灯油は、これから流通在庫の積み増しが本格化する。今年は元売が早めに在庫の積み増しをしており、すでに307万KL(8月27日)と300KLをオーバーし、前年に比べると90万KL増となっている。灯油在庫が多いのは、3月11日の東日本大震災の影響で、現在も製油所の操業が停止(仙台、千葉)していることから、今冬の東北地方の灯油供給に支障が生じることが懸念されるため、早めの積み増しとなっている。昨年は低在庫で推移しており、今年も電気・ガスヘの燃料転換が進むことで販売減が見込まれていたが、震災の影響で様変わりとなってきた。
 JX日鉱日石エネルギーは、仙台製油所が停止していることから、他の製油所の稼働率をアップして東北地方への供給を確保するため在庫を積み上げている。各社も同様に東北地方への供給確保に万全を期している。灯油タンクの不備、ローリー不足が懸念されているため、事前に在庫を確保しているが、実際の需要が、どの程度の水準となるのか予測は難しい。
 元売としては、まず灯油在庫を租み上げて供給を確保しているが、それにはマージンを確保することが必要となるため、これから業転市況、仕切価格を値上げすることがポイントとなる。
 現在は不需要期であるため、市況は低迷しているが、シーズン入りとなる10月頃は相場づくりの時期となるため、業転市況は、これから値上げに取り組むことになる。灯油の大手販売業者、商社などは、これから在庫を積み増しすることになるため元売とのかけ引きが展開される。
 大手業者は、灯油タンクを保有しており、夏場の安値時期の在庫を積み増し、冬場で値上がりマージン増を見込んでシーズンに備える。だが、予想通り値上がりするか否かは今後の原油価格にかかってくる。SSサイドは、シーズン前に地下タンクを満タンにするが、その後は実需要に応じて元売からその都度仕入れるため、その仕切価格に適正マージンを
加算して販売することになる。暖冬で販売減となり、市況が下落して安値販売となると赤字となるケースもあるが、灯油販売は冬場での利益を確保する重要な商品となっている。
 だが、灯油商戦は、天候次第で販売数量が大きく変動することと、今後の原油価格の変動にも影響されるため難しい。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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