2011.10.18 のニュース
全石連 緊急時円滑化法を狙う ―行き過ぎた規制緩和策の是正求めるー
全石連は、東日本大震災の教訓を踏まえて「緊急時石油流通円滑化法」(仮称)の導入を要望している。緊急時において、石油の安定供給責任が求められるが、それならば平時から緊急時に対応を講じるべき、としているもの。
これまでの行き過ぎた規制緩和(自由化)政策を是正し、平時から、緊急時に備えて、精製元売・商社・販売業者の情報(油糟所を含む)を資源エネルギー庁に集中し、緊急時
の際には、この情報をもとに、石油製品を迅速かつ適正に配分する仕組みを構築すべき(石油版スマートグジッド)であると提言している。公共施設への自家発電の義務付けなど
を狙う。
全石連の韓国石油事情調査では「政府から価格のガイドラインが出されており、行政介入の度合いが強い」と日本に比べて自由I化は遅れていると指摘している。
石油業界は96年4月以降、特石法が廃止、01年末の石油業法の廃止で完全自由化に移行した。現在は、エネルギー高度化法(設備処理)が唯一の規制法であり、備蓄法も施行されている。あえて言えばエネルギー基本法(基本法)となるが、現在、見直しが審議されており、石油の位置づけ、長期の数値目標などが対象となり、規制の法律ではない。東日本大震災による福島原発事故で原発政策をゼロベースで見直しするため、総合エネルギー調査会議論を開始しているが、原発の依存度の低減が主なテーマで、石油政策は位置
づけが議論となる程度である。
天坊・石油連盟会長も「これまでの安定供給策は原油の調達、自給率の向上だったが、今後は緊急時を含めて製油所、SSから最終消費者までのサプライチェーンの維持・強化
をすべきである」と語っており全石連と同じ意見である。しかし、緊急時に備えて平時に法律で規制するとなると、簡単ではなく問題点も多い。今までの自由化路線を変更することになり、政治、行政が方向転換できるのか調整が必要となる。
行き過ぎた自由化によって元売・販売業界は、過当競争が展開され、SSは6万力所から3万8000カ所に減少、赤字経営が続き過疎地、離島問題が表面化、平時でも安定供
給が問題となっている。規制緩和による自由化は市場メカニズムの導入で市況は急落、一気に経営難となり、自由化の波に押し流されたことになるが、再び、規制時代に逆戻りができるのか難しいところである。
緊急時の安定供給を想定しているが、平時でどこまで規制が可能であるか、今までは議論の対象にすらなっていなかったが、まず議論されるのかが注目される。電気、ガス事業
は、法律で料金などが規制され、保護されており、地域独占である。同じエネルギーでも石油が自由化されて過当競争に晒されているのは不当であるとの意見も出ている。今回の
東日本大震災を機に再燃してきた意見であるが、石油の役割が評価されてもどこまで規制が実施できるかなど問題が提起されたが、議論されるか否かはこれからとなる。
規制は難しいとしても、緊急時の対応策について国による予算措置は講じられている。石油のサプライチェーンの維持・強化という名目で予算が計上されていることは、石油の
位置づけが向上したことにはなる。