2011.10.26 のニュース
原油価格は大きく変動せず ―リビアの原油生産再開には時間がかかる―
リビアのカダフィ大佐が死亡(20日)、独裁体制が崩壊したことで、政情が安定して原油生産が再開され、輸出が回復するとみられている。そのため今後の原油価格の動向が注
目されているが、生産が再開されれば下落が見込まれる。だが、原油生産の再開には時間がかかりそうであるため、当而は大きく変動しないようである。リビアの原油生産能力は160万バーレル/日あり、ほとんどがヨーロッパに輸出されている。リビアの内戦で原油生産が停止、原油価格の高騰を誘発したことになる。新政権へ移行しても、政治的な混乱が収拾するまでに時間がかかるため原油生産、輸出再開の見通しは難しい。足元の原油価格をみても、小幅な変動をみせているが直ちには下落することはないようである。リビア問題とは、連動するブレントは110ドル/バーレル程度で推移している。
天坊・石油連盟会長も「リビアの政情が安定、原油生産が開始されるには時間がかかるため、今後の原油価格は大きく変動しないと思う」と述べている。
原油価格は、今年に入って高値に転じているが、その要因は、チェニジア、エジプト、リビアで起きた民主化の波である『アラブの春』が浸透したことで政情が不安となったこ
とに起因する。これが中東に波及するとの見方が台頭してきたものである。エジプトでは2月、リビアでは3月頃から混乱が続き、この北アフリカの混迷は、近場のヨーロッパの原油需給に影響したため、ブレントが代打して値上がり、独歩高となった。これに中東産のドバイが連動して値上がりしたもの。4月の平均ではWTIは100ドルに対して、ブレントは124ドル、ドバイは116ドルに急騰しており、「ブレント高のWTI安」という価格体系に変わってきた。
アメリカの国産であるWTIは、アフリカの状況とは、別の値動きをしており、ブレント、ドバイとの間で29ドル以上の価格差が生じることになった。最近では、WTIが85~86ドルであるのに対してブレント、ドバイは110ドル程度で推移している。 そのためWTIは原油価格の指標としで通用しなくなっており、これに代わってブレントが指標として活用されてきた。北アフリカの混乱は、近場のブレントの価格に影響されることになり、原油価格もブレントリンクというケースも出てきた。
そうなると、今後のリビアの動向が注目されるが、リビアは輸出国であるため、生産が再開となれば、原油価格は値下がりも予想される。しかし、ギリシャの財政不安からEU
全体の経済危機、これがアメリカ経済にも影響することになり、ドル安、ユーロ安となりその結果、円高になっている。一時は75円/ドル台の円高となり、日本も円高で輸出産業が大きな影響を受けている。このように先進国では景気後退によって石油需要は減少する。
一方、中国、インドの新興国は石油需要の増加が見込まれているが、伸び率は鈍化している。その結果、世界全体の需要動向にも、影響が出そうである。リビアの生産開始も、先進国の景気後退で、相殺されることになると原油需給はバランスを保ち値下がりすることなく安定して推移しそうである。