日刊ニュース

2011.10.31 のニュース

原発縮小でベストミックスを探る ―化石燃料でカバーが大勢意見―

 エネルギー基本計画の見直しについて、総合エネルギー調査会・基本問題調査会の審議が始まったが、焦点の原発は、ゼロから縮小・維持する、との幅広い意見が出ている。まず「電源構成のベストミックスを考える視点」から議論された。予想された意見であるが、原発を減らして、これに代わって将来は再生可能エネルギー(新エネルギー)を増やすことになるが、その間はLNG、石油火力でカバーするということが、多くの見方となる。
 再生可能エネルギー(太陽光発電風力、地熱など)は、電源構成でみると1%のシェアであり、水力を含めると9%という数字となる。これで原発の29%をカバーすることは難しい。その中でも太陽光発電の拡大が政策で推進されており、全量買取り制が実施となるが、その料金をめぐっては今後の課題となっている。買取価格を高く設定すれば、最終的には一般の電力料金の値上げに反映されるため、消費者の負担が増すことになる。
 その他、風力は、設置場所も限定されるなど、多くの問題を抱える。地熱も開発となると、日本は火山国であるため候補地は多いが、国立公園など、環境問題との調整も絡んでくる。さらに、調査から探鉱、開発、生産となると10年以上もかかる。熱量を確保するためには、採算に乗る規模が必要となることと、発電所の設置などリードタイムも長い。これも電力買取制が、うまく機能することが前提となる。
 また、ドイツが原発の廃止、太陽光発電の推進で成功例のモデルとなっているが、太陽光発電の買取制も見直しが議論となっている。原発廃止は20年先のことであり、電力も送電線が隣国と繋がっており、融通が可能であるという立地条件の違いから、ドイツの例を日本で実施することは無理があるとの見方もある。日本も隣国の韓国と電力の送電線を繋ぐべきとの案もあるが、安全保障など外交問題に絡むため、時間もコストもかかる。
 原発の縮小と絡んで温暖化対策問題が議論となる。鳩山元首相が提案したCO2などの25%削減の中期計画は完全に後退しており、公約違反となっている。原発を低減しなが
ら温暖化対策をどこまで推進できるのか、二律背反する問題も提起されている。節電、省エネルギー、水素など新技術の開発が期待される。
 いずれにしても今回のエネルギー計画の見直しの議論は、すでに先行して審議している内閣府のエネルギー・環境会議では、基本理念として、原発低減を目指したシナリオを描いていく。「反原発」と「原発推進」という二項対立を乗り越えた国民的な議論の展開を決定している。
 結果的には、電源を構成している石油、石炭、LNG、再生可能エネルギー、原発の配分を改定することでベストミックスを探ることになる。原発の依存度を低下させる方向
は決まっており、今後、原発の減少をカバーするのは当面は化石燃料(LNG、石油)となる。現実にLNG、石油火力は、稼働率が大幅にアップしており、LNGの輸入、電
力用のC重油、生だき用原油の輸入は増大している。石油火力は休止中のものを再稼働しており、石油業界は石油の復活、位置づけの向上を狙っている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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