日刊ニュース

2011.11.04 のニュース

エネ白書 原発依存度の引き下げ ―石油は災害時での確実な供給体制が課題―

 経済産業省は、エネルギー白書(平成22年度)を発表した。毎年春に発表しており、エネルギー政策に関する現状の課題認識、施策と今後の方向性を提示している。しかし、今回は22年度末の3月11日に東日本大震災が発生、福島原発の事故を契機に原発政策の見直し、災害に際しての緊急時対策が議論されるなど、エネルギー需給全般を見直すことになった。そのため作成が遅れていた。
 原発事故による電力、都市ガス、石油、LPGなどの被害、対応などを記述、さらに原発事故後の各国の政策の変化、国際エネルギー市場動向を分析している。ポイントとして、東日本大震災によるエネルギーを巡る対応と今後の課題をあげている。東日本大震災による東電福島原発事故で原子力の安全性について、国民の信頼が大きく損なわれた。また、電力・石油・ガスといったエネルギー供給に混乱が生じ、わが国のエネルギーシステムが抱える脆弱性が明らかになった、と現状を認識している。
 これらを踏まえ、これまでのエネルギー政策を反省し聖域なく見直しする。エネルギー基本法は白紙から見直し、来年の夏を目処に新しい戦略と計画を打ち出すことになった。そのため総合エネルギー調査会で審議が開始された。同じく内閣府ではエネルギー・環境会議(主要閣僚で構成)を設立して政治主導で原発政策を先行して審議することになった。双方で来年夏に方針を打ち出すが、整合性が問われることになる。
 経産省の総合エネ調はエネルギー基本法に基づく「エネルギー基本計画」を策定することになる。エネルギー・環境会議は、構成メンバーからみて政府の意向が反映することに
なる。まず、議論のたたき台となる原発のコスト(最終処理を含め)を算出することになっている。
 原発については、中長期には、依存度を引き下げるとういう方向性が打ち出されている。さらに省エネルギー、節電対策の推進、再生可能エネルギー開発・普及のための固定価格買取制度の活用に取り組むことになる。
 原発の依存度を引き下げる方針は決まっている。現在の電源構成では約30%であり、これを2030年に50%に引き上げ、新設の原発を15基建設する計画であったが、これが中止となり、さらに依存度を引き下げることになる。その引き下げを巡っては、議論となるところである。現行の30%を20%程度に引き下げるとの案が出ているが、委員の中には原発ゼロの意見もあり調整は難しい。原発の依存度を引き下げても、原発の減少分をカバーするのは、LNG、石油火力であり、再生可能エネルギー(太陽光、地熱など)でのカバーは不可能であるので、現実的な案での議論が望まれる。短期、長期という時間軸での冷静な議論、「反原発」と「原発推進」という二項対立の議論を乗ひ越えて国民的な合意を形成することになっている。
 石油精製・元売は、一時は6製油所が停止、現在も2ヵ所が停止中である。またSSの被害もあり、西日本からの大量転送による供給確保、ローリーの投入など、災害時でも確
実に供給できる体制の整備が重要となった。災害に備えて平時からサプライチェーンの維持・強化が求められており、補正予算、来年度予算に要求している。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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