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「今の政治家に欠けているもの」 2010年08月05日更新

おそらく政治家も含めてすべての日本人が 現在の日本が抱えている最大の問題は経済だと考えているだろう。これがよく分かっているから政府は日銀の低金利政策を支持し 子供手当ての支給や高速道料金の引き下げや企業所得税率の引き下げさらにはエコ減税など経済の刺激に努力をしている。こうした施策は国の財政を圧迫するのだが これにより経済が回復すれば税収の増加が期待され国としての支出を上回る収入が将来見込めるとふんでいるのだろう。しかし本当にそうなるのだろうか。

まず政府が国民にお金を渡しても国民がそれを消費に回さなければ消費の増加にはつながらない。つまりこれが消費に回されるような仕組みが必要となろうがそのようなものがあるのだろうか。それでなくとも日本の財政は毎年大赤字を積み上げているのだから確実に消費に回る確信がないかぎりこうした方策はとるべきではないだろう。さらに国民の消費支出といっても自分の懐から支出するかぎりその増加額には限度があり短期的な大幅増にはつながらないだろう。ただし国民が借金をしてでも支出するという場合は別である。この場合には即効的な大幅増が期待できる。では国民はどういう時に借金に踏み切るのだろうか。

答えは簡単である。今日より明日のほうが物価も上がるが収入も増えると思える時である。したがってどうしたら国民にこのように考えてもらえるのかを政府は真剣に検討すべきだろう。極論すれば現在抱えている問題はデフレでありこの解決法はインフレということになる。インフレと聞いただけで反対する向きが多いが ではデフレとどちらがよいのか。デフレは困るがインフレは反対では一歩も前には進めない。無論バブルのような極度のインフレは人間を狂わせるだけで避けなくてはならない。しかしデフレが続くと国民の間に閉塞感が高まり活力が失われる。一定に制御されたインフレこそが解決策ではないだろうか。

ここで思い出されるのが嘗て池田内閣が打ち出した所得倍増論である。国民の所得を倍にするというものだったが これを聞いた国民の大半は半信半疑であった。しかし国民のあいだに漠然とした夢が生まれたのも事実であった。そして当初10年計画であったものが実際には7年後に日本の経済規模は倍になったのである。これを可能にしたものは他でもない国民のあいだに生まれた夢であったと思う。であるなら政治家にとって最も大切な仕事は国民に夢をあたえることだといえよう。この夢とは今日より明日のほうが良くなるという夢である。その経済効果はすでに証明されているのだ。

たしかに池田内閣の当時と現在とでは環境が大きく違っており同列には論じられない。しかしそれならば現代に相応しい夢作りを考えてはどうか。政治家が困った困ったと言っていては国が滅ぶ。たとえば少子化問題にしても多少の補助金を与えたら出生率が上がるとはとても思えない。少子化にはそれを支える合理性があるのだから そこをしっかりと見つめて対応を考えるべきであろう。

日本が世界第二位の経済大国と言われたころをもって経済の規模に関してはすでにピークに立ったのではないだろうか。今後いくら規模を追ってもおそらく 中国には絶対かなわない。なれば日本が向かうべき方向は質の向上しかないだろう。経済にしても文化にしても質の向上により国民を豊かにするにはどうしたらよいか これを必死に考えて答えを見つけ国民に夢を与えるのが今の政治家の唯一最大の仕事ではないだろうか。リーダーシップを発揮して国民を引っ張って行くことのできる政治家の登場を願ってやまない。

(一本杉)

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