「学生の就職活動」 2011年01月18日更新
大手商社が学生の採用試験を4年生の夏まで行わないことを決めたという。
これは当たり前のことのように思えるが 現実は殆んどの大手企業が3年生の夏には採用試験を行っているのである。青田刈りという言葉があるが おそらく他社より早く採用試験を行って優秀な学生を確保したいという考えがこうした現実を生んだのであろう。しかしこれは企業側の都合のみで行われていることであり 学生側の都合が考慮されていない。
大学での四年間は学生の一生のなかでかなり短い期間であり 同時に少年から青年へと成長する非常に大事な期間でもある。無論学問に没頭できる貴重な期間であるが なにもそれだけではない。たとえばクラブ活動の場合三年生になると部員を指導する側に立つことになり それからの二年間で行う活動の目標を定めそれに向かって部員を鼓舞する能力を身につけなくてはならない。つまりリーダーシップを学ぶ貴重な期間が後半の二年間なのである。
ところが三年生になったらすぐに就職活動で企業回りをせざるをえないとなると 学生はこの貴重な期間に身につけるべきことが出来ないことになる。そして企業はその身勝手な自らの行動によって 本来学ぶべきことを学んでいない学生を採用せざるをえないのだ。つまりこの構図のなかでは学生が被害者なのだが 回りまわって結局企業側がその咎めをうけていることになる。こう考えると今回の大手商社の決断はまことに当を得たものだといえよう。
ところで就職に関する筆者なりの見解をここで述べてみたい。まず殆んどの学生が大手企業に就職することを望むようだが おそらくその理由は大手の企業であれば収入も多く一生身分が安定すると思うからだろう。だが本当にそうだろうか。昔から企業寿命30年説というのがあるが 生まれたばかりの新進気鋭の会社でも30年もすれば老化が進みやがて衰退していくというものだ。これが正しいとすれば就職活動をしている時点で絶好調と思える会社は その後
衰退の道を歩むはずである。学生諸君は果たしてこうした企業に就職することを望んでいるのだろうか。無論それは一生の身分を保証してくれるものではない。
つぎにこうした学生の大手企業志向には入社してから何をしたいのかが見えてこない。それまでの人生の二倍にも相当する社会人としての人生を始めるに当って確たる目的を持たないでよいのだろうか。入社しただけで満足するような
学生は 入社したところでろくな仕事はできないだろうし結局は幸せな人生とはならないだろう。まず社会に出たら自分が何をやりたいのかを自分ではっきりさせることが肝要だろう。
大企業に入社するとそこでは新入社員は大きな機械の歯車のひとつにしかすぎない存在となる。そしてそのような状態が延々と続くのだ。一方小型の会社に入れば経営のトップとの距離は大企業に較べて格段と近くなり かなり若い時から会社の中枢に近い仕事ができる。つまり出来るだけ早く重要な仕事につきたいのであれば 小型の会社に入った方が良いのだ。
もし学生の多くがこれを分かっていれば 仕事熱心な学生が小型の企業に入りそうでない学生が大企業に入るので 大企業は衰退し小型企業が急速に発展するから 企業寿命30年説が裏づけされることになるのだが。
本欄も新しい年を迎えることになりました。今年は地球滅亡の年とマヤ歴では
予言しているようですが まさかそのようなことはないにしても何か大きな事が起きそうな予感がしないでもありません。今年一年を注意深く見守って参りましょう。
(一本杉)