「少子高齢化」 2004年05月25日更新
小子高齢化が進むに連れて 様々な問題が浮かび上がってきている。 これは先進国共通の問題ではあるが その傾向が日本では際立っているようだ。 数々の問題の中で今最も頻繁に議論されているのが健康保険と年金の問題である。ともに受け取る人と支払う人がいるのだが 戦後長い間支払う人の数が受け取る人の数を大きく上回っていたため一切問題は起きなかった。だがここにきてこの構造が崩れだしたのだ。
これまで騎馬戦を戦う場合 三人が馬となって騎士一人を担いでいたのが 最近は馬の人数が減って二人となり そのうち一人になりかねないとあって 馬役がもたないと言いはじめた。 この話は 十分に理解できる もっともなものだ。状況が変わったのだから 騎士役・馬役ともに現状に合ったやり方を考えねばなるまい。
高齢者が受け取る額を減らすことにより 若年層の負担を減らすのは 避けられない対処法であろう。 たしかに 筆者が知る高齢層は 贅沢ではないにしても けっこう豊かな生活を楽しんでいるように見受ける。 受け取る額が多少減ったにしても それにより生活に困窮するとは思えない。
しかし ちょっと気になるのは 一連の議論の中で高齢層が得をし 若年層が損をしているような言い方があることだ。 これにはどうも納得できないのでここで高齢層を少し援護してみたいと思う。
高齢層と言われる人達は 戦前に生まれ若い時に敗戦を経験した人達だ。中には兵役を経験した人もいるだろう。 敗戦時に焦土と化した日本を見つめて ぼうぜんと立ち尽くした人達だ。だが 貧困と飢えという現実を目の前に ただ立ち尽くしているわけにはいかなかった。 その日の糧をうるために なんであろうと必死に働いた。
戦後10年程を経過すると日本の経済復興もようやく軌道に乗りはじめた。 収入も増加の傾向を辿ったが しかしこれは同時にインフレとの追いかけっこでもあった。
結婚して子供ができれば家を持たねばならない。インフレの継続が予想されたので借家より持ち家の方が有利と思えた。兄弟が多い彼らにとって 親との同居は無理であったから 多額のローンを借りて家を買わねばならなかった。 その金利も相当なものであったから 以後20-30年間に亘って収入の2-3割かあるいはそれ以上をその返済に回すことになる。一方で 子供の養育費も高騰しており これが家計の負担として重くのしかかる。このため 彼らは平均して3-4人兄弟であるが 彼らの子供は平均して 1-3人となっている。このローンと教育費の負担からやっと解放された時 彼らは定年を迎えていたのである。
この間休暇をとって海外旅行に行くなどの余裕はなかったし 一泊で温泉に行くにしても会社の厚生施設を利用するのが専らであった。ひたすら働いて家を建て子供の養育費を払ってきたのだ。子供が社会人となり 退職金を手にし 年金を受け取るようになって やっと自らの生活を楽しめるようになった彼らを 楽な生活をしているといって責めることはできない。
少子化の時代の若年層は 住宅も含めて親からの相続財産は 高齢者の場合よりはるかに多いはずである。フリーターが増えたり 年金未加入者が多いのも 若年層が将来に関して不安を持っていないことの現れであり つまりは財産の相続をあてにしているからではなかろうか。30を過ぎても親の家から巣立っていない子供なども同様である。 若年層の多くは つまり甘ったれなのだ。 それをさらに甘やかすような議論はするべきではないと思うのだが。 若年層には 自己責任という言葉の意味をしっかりと認識してほしい。
(一本杉)