「憲法改正論について」 2005年02月24日更新
最近与野党を含めて 我国の平和憲法と称される憲法 特に戦争の放棄を明言している第9条を改正しようとする動きが活発のようだ。 たしかに第9条をその語句の通り解釈すれば 自衛隊は日本には無い筈なのである。 それが何故存在しているのかそれは語句の通りには解釈していないからだ。 こうした矛盾をいつまでも放置しておくわけにもいかなかろうというのが 改正論者の見解のようだ。 つまり 自衛隊の存在を是認する語句に変えようとするものだ。 おそらく自衛隊は憲法違反だから即座に廃止すべきだと云う人は 今となっては国民の中にもあまりいないだろうから ここまでなら国民も大方納得するだろう。
問題はこれと同時に集団的自衛権も行使できるように変えたいと 主に与党が考えていることだ。 集団的自衛権とは 平たく言えば他人の喧嘩を買って出るということだろう。 友達がある男に殴られたら 友達と一緒にある男を殴り返すというものである。いかにも気風のよい江戸っ子みたいで恰好がいい。 しかし戦争となるとそうも云っていられない。 同盟国が戦争を始めたら日本も戦争をするとなれば これは平和憲法を完全にないがしろにすることになる。
そもそも現憲法は占領軍によって押し付けられたものだなどと 否定的な意見はよく聞かれるが あまり肯定的な意見は耳にしない。 そこでほんとうに現憲法は役に立っていないのかどうかを考えてみよう。 まず戦後の我国経済成長に平和憲法が寄与したことは確かではなかろうか。 この憲法のおかげで戦後の資本不足時代に 日本は軍事費に大きな予算を割くことなく 産業の復興再生や社会インフラに資金を投入することができたのだ。 この憲法効果は真に大きなもので 高度経済成長へと我国を導いたと云えるし ひょっとしたらお隣の韓国の成長が大幅に後れたのも憲法の違いによる
のかもしれない。
また 日本の平和憲法は日本人が思っているよりはるかによく外国に知られている。 これあるがゆえに 東アジアを中心に諸外国は日本に侵略される危惧を持たずに済んでいるのだ。こうして諸外国の軍事費の削減にも貢献しており 地域の平和にも寄与していることになる。 現在イラクに駐屯している自衛隊が直接的な攻撃を一切受けていないのも おそらく平和憲法のおかげである。 オランダ軍やイギリス軍そしてオーストラリア軍が 自衛隊駐屯地域の治安維持を引き受けるのも 同様の理由であろう。
日本国民が現在負担している軍事費は GNPの1%を上限としている。 これは諸外国における負担率とくらべて格段に低い。 無論平和憲法あるがゆえである。 もし集団的自衛権に基づき世界のどこででも戦争を行う必要が出てくれば この負担率は急激に上昇するだろう。 10倍あるいは20倍になっても 決して不思議はないのである。 この点は是非とも国民に充分説明し その合意を得てから決断を行ってほしいと思う。
平和憲法は世界に類を見ない真に貴重なものである。 おそらく世界のどの国であれ今から同じ憲法を作ろうと思っても不可能であろう。 日本も一旦平和憲法を変えたらこれを元に戻すことはできない。 平和憲法は第二次世界大戦によって失われた 無数の人命と莫大な財産の代償として手に入れた 云うなれば宝物なのである。 莫大な軍事費を負担するよりは 現在GNPの0.2%程度であるODAを思い切って増額する方が 余程平和憲法の理念にかなった国際貢献と云えるのではないか。 これから平和な21世紀を作るべく努力すべき時に 戦乱の20世紀に日本を引き戻すような愚は 何としても行ってほしくない。
(一本杉)