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「原油価格最高値を更新」 2006年07月20日更新

先週末にWTI原油が過去最高値を更新しバーレル当り80ドルが目前となった。
正確には100年ほど前に100ドル以上の値がついたことがあったらしいが、石油がエネルギーの主役の座についてからは間違いなく最高値である。

パレスチナのハマスに加え、レバノンのヒズボラがイスラエルと戦闘状態になり、インドではイスラム教系組織が大規模な爆弾テロを行うなど、イスラム地域ではきな臭さが増すばかりである。これらはすべて原油価格を押し上げる要因になっており、下降場面は予想しがたい。当面の市場の関心は原油価格が80ドルを突破する事態が近い将来くるかどうかに集中しているのではなかろうか。
もし80ドルを超えたら案外簡単に100ドルまで上昇するかもしれない。

原油価格のバーレル当り10ドルの変動は、大雑把に計算して7,000/klに相当する。過去一ヶ月で原油価格は約10ドル上昇したから、ガソリンの店頭価格も来月あたり7円ほど上るかもしれない。原油価格が100ドルとなれば更に14円上って店頭価格は150を超えることになる。こうなったら消費者も何らかの対応を迫られるだろう。しかし問題はガソリンだけではない。

石油を燃料としている航空機・船舶・自動車はもろにこの影響を受けることになる。航空料金はすでに値上がりしているが更なる値上げが必要となり、国内では鉄道に顧客を奪われる可能性が高い。国際線は運賃の高騰のために乗客の減少が起こるだろう。船舶も同様で運賃の値上げに伴い多かれ少なかれ顧客や荷物を失うことになるだろう。自動車は乗用車の場合大型車の販売が不振に陥るのではないか。単にガソリン代が嵩むという理由だけではなく、大型車に乗ること自体が反社会的と捉えられるおそれがある。その分小型車や低燃費車の販売量は増えるだろう。トラックは低燃費車の開発が急がれるが、長距離貨物などは鉄道に奪われるのではなかろうか。

冬になると暖房用灯油の季節をむかえるが、これもかなり高いものになっている筈である。すでに起きていることだが、灯油から電気への暖房シフトが進みそうだ。もともと灯油は面倒な暖房源だが、その価格が電気やガスに比べて圧倒的に安かったために広く使われてきた。しかしここにきてこの灯油の優位性が失われてきており、そうなれば大方は電気を選択するだろう。
原油価格高騰の間接的影響はじつに多岐にわたっている。原料の殆んどが石油である石油化学製品は大幅値上げを免れまい。農業も最近はエネルギー依存度が高くなっているので、青果物や野菜の価格は上昇せざるをえない。いろいろ考えあわせると、原油価格高騰を震源としてあらゆる物価が押し上げられる地震が起きようとしているのではないか。この地震に如何に対応するか、我々の知恵が試されようとしている。

(一本杉)

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