「平和は日本の生命線」 2007年02月06日更新
現代の経済はエネルギー無しには存在しえない。エネルギーあってこその経済なのである。世界で二番目の経済大国と言われる日本も、勿論同様である。しかしそのエネルギーの中枢を占めている石油を例にとれば、日本はその殆んどすべてを輸入に頼っているのが現実である。つまり石油の輸入が困難になれば日本の経済は即座に破綻するのである。
輸入石油の大部分が中東の産油国から運ばれているが、じつはこれは20日間にも及ぶ長い海上輸送なのである。その途中に二つの難関がある。まず殆んどの中東産石油はアラビア湾(かつてはペルシャ湾と呼ばれていた)から出荷されるがこれを積んだタンカーはホルムズ海峡を通過して外洋に出なくてはならない。この海峡は非常に幅が狭く両岸からの攻撃に対し防ぐことが難しいのみならず機雷でも撒かれたらまず航行不可能となるところである。何かと不穏な中東ではこのような事態がいつ起きても不思議ではない。
その次に待ち受けているのがマラッカ海峡である。このマレーシアとインドネシアの間にある海峡も随分と幅が狭くさらに距離が長い。近来海賊が盛んに出没することで有名な海峡でもある。さらにこの海峡を挟む両国ともイスラム教徒の多い国であり、したがって政治的に不安定な要素を含んでいる。無論この海峡を避けて航行することは可能だが、この場合航海日数が大幅に増えることになりこれはコストの上昇を招く。
こうした難関で非常事態が起きれば日本への石油の供給は即座に途絶え、90日分の備蓄原油を使い果たした時点で日本の経済活動は全面的にストップすることになる。ここまでは石油輸送面の脆弱性を述べたが、石油の供給そのものが止まる可能性もある。例えばサウジアラビアの石油生産施設もしくは輸出施設がテロや戦争のために破壊された場合、今度は日本の輸入の約三割を占める供給そのものが得られなくなり、もしUAEでも同様のことが起きれば合計で五割の供給を失う事態となる。
こう考えると世界が平和であることが日本の国益に照らして最も重要なのが分る。戦後の日本経済が高度成長を実現できたのも、安い原油があったればこそである。この点では安い原油を供給してくれた産油諸国に感謝しなくてはならない。そして今後ともその恩恵に浴したければ、世界の平和に積極的に貢献するべきであろう。日本が武力をもって海外の紛争に参加することがこの目的に適っているとは思えない。折角世界に類を見ない平和憲法というものを持っているのだから、いうなれば平和の宣教師として積極的に世界中で布教活動を行うのが最も国益に適った行動である。具体的にどうするかについては、国全体で考えてほしい。かならず良い知恵が出てくるであろう。
(一本杉)