2014.11.21 のニュース
石油精製・化学の将来像
経済産業省は今月7日、産業競争力強化法第50条に基づいて、石油化学産業の市場構造に関する調査を行い、調査報告を発表した。50条による調査報告は今年6月の精製元売業界に次いで2例目。今後、製造拠点の海外移転や少子高齢化による需要減に加え、北米の安価なシェールガス由来の化学製品がアジア市場にあふれ、石油化学産業の主力製品であるプラスチックや化学繊維の原料となるエチレンの供給力がだぶつくことが想定されるため、石油化学10社に対して、石化整備の統廃合など過剰な供給能力の削減を求めている。
調査報告では、各精製元売会社の製油所は石油化学各社のエチレン工場と隣接している場合が多いことから、コンビナート連携による石油精製と化学の国際競争力強化の必要性を提言。過去には精製元売と石油化学会社などの20社が2000年に石油化学コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)を設立し、石油精製と石油化学の連携を含むコンビナート連携事業(RING事業)の実証研究を行った。石油精製の留分を石化製品を製造するための原材料として活用し、その残渣を発電用燃料として活用するといった留分の徹底的な活用も進められた。また、石油精製に対して石油化学の比重を高めるといった取り組みで年間数10億円のコスト削減を実現した成果も現れた。
このため、経産省は各石油化学会社による生産設備の集約や再編による生産効率を高まる一方で、隣接する石油精製企業との連携強化による生産体制最適化の方向性を提言した。
石油精製元売各社は10月末までに、7月末に告示されたエネルギー供給構造高度化法の新たな判断基準に対し、17年3月末を期限とする自社の設備最適化(残油処理装置装備率の改善)の措置と事業再編の方針を含む目標達成計画を提出した。これによってエネ庁は、各社がすべて常圧蒸留装置の能力削減で対応した場合、40万の削減につながると試算するが、能力削減だけでは縮み行く需要への縮小均衡を図るだけで高度化にはつながらない。
一方で石油精製・石油化学のコンビナート連携が進めば、石油留分の高付加価値の石化製品への転用が進み、ガソリンなど石油製品の供給過剰体制が解消されることも期待されるほか、収益力の向上や国際競争力が高まることも期待できる。石油産業の将来像の一端が見えてくる。