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「日本の電力に関して」 2011年08月05日更新

福島原発事故が発生してから約5ヶ月が経過したが 未だ収束の見通しがたっていない。放射線は目には見えないし匂いもない。人間も含めた動物は 目と耳と鼻を使って危険を察知するのだが これらは放射線に対しては無力である。
したがって国民は言いようのない恐怖と不安に怯えるしかなくなる。報道される写真は地震と津波による被害を生々しく伝えるが 放射線による被害は伝えようがない。原発事故が一刻も早く収束に向かうことを願うのみだが 同時にこの事故から我々は多くのことを学ぶべきだと思う。

まず日本の電力供給網についてである。日本では10の電力会社が夫々の地域で
電力の供給を独占している。今回その弊害がはっきりと見えてきた。地域独占制にしたがゆえに日本全体を制御するシステムが出来ていなかった。つまり電力会社の一つが電力供給に問題を生じた時に沖縄はさておいて他の8社が不足する電力を補うという当たり前のことができないのだ。まず東電・東北電・北電の三社とその他の電力会社とは電気の周波数が違うためお互いの融通がきかない。さらに同じ周波数の電力会社間の場合でも他社への融通に使える電線の送電能力が小さく実際にはあまり役に立たない。そもそも他社への電力の大規模な融通は前提とされていなかったからだろう。

この問題の解決手段としては まず発電と送電を分離して送電会社は全国を網羅した送電網を築き何時でも何処からでも電力の融通がつけられるようにすることだろう。勿論この場合電気の周波数は統一する必要がある。もしこれが難しければ現体制はそのまま維持し融通能力を増大して緊急時に備えることも考えられるが この場合供給側と需要側との利害の調整などに手間取ることが想像される。やはり発送電分離に思い切って踏み切るのが正解ではないかと思える。

つぎに原発だが 今回の事故で原発の最大の問題は事故が起きた時にその損害の限度がいつまでたっても明確にならないところにあることがはっきりした。
10年後20年後になって顕在化した放射線傷害までも補償するとなると これは民間企業の能力を超えた話になるだろう。そこで原発すべてを廃炉にすべし
という意見も聞こえるが そもそも廃炉そのものが簡単なことではないし また莫大な投資がまったく無駄になるのはできれば避けたいところだ。そこで提案だが まず原発すべてを100%まではいかないにしてもせめて50%程度まで
国有化して国の関与と責任をはっきりさせてはどうか。そのうえで今回の経験をふまえて一層の安全管理を徹底させる。どんなに安全を図っても必ず事故は起こりうるという前提で 組織の上から下までが常に緊張感を失わないことが
もっとも重要だろう。こうしてこの目的のために現代の英知を結集させればこれまでよりはるかに進んだ安全管理ができるはずである。ただしこれが出来たからと言ってさらに原発を増やそうなどと考えるべきではない。

ところで筆者が今最も恐れているのは毎年中国から渡ってくる黄沙に放射線が含まれることである。中国は原発を大幅に増加させる計画であり そのうちの一つが事故を起こせばこれが現実となるのである。また韓国の東半分に原発が並んでいるがこれに関しても同様のことが言える。つまり原発の安全管理は
一国の範囲内だけで努力をしても限界があるのだ。やはりなんとしても国際的な枠組みの中でこの問題は追及されるべきであろう。今回の事故をきっかけに日本がこうした動きの指導的立場に立つことは真に有意義なことだと思うのだが。

(一本杉)

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