「原油価格決定の仕組み」 2004年06月03日更新
原油価格が湾岸戦争時の高値を抜くなど高騰をつづけ 世界経済に悪い影響を与える可能性が出てきたと新聞で報道され 米高官がOPECに対し増産を要請したとの報道もある。たしかに現在の価格は久し振りの高値であり 世界経済のコストにある程度の上昇要因として働く可能性はあるが デフレ経済に苛まれてきた我々としてはむしろ良い傾向ではないかと言いたいところだ。
ところで原油価格がどのようにして決まるのかに関しては 一般には殆ど知られていないのではなかろうか。OPEC 即ち石油輸出国機構が原油市場で支配的な力を誇ったのは もう30年も前のことである。その後世界各地で大規模な油田開発が行われ 今ではロシアがサウジアラビアに匹敵する石油産出国になるなど OPECのシェアーはガタ落ちなのである。したがって 彼らに原油価格を決定する力はもはやない。
では誰が決めているのかと言えば 答えはウオールストリートである。ニューヨークの証券街にある商品取引所が米国産の原油(W.T.I.)の取引を扱っているが ここで決まる価格に比例して 中東産の原油価格も決まっている。 ニューヨークの原油相場が上がれば 世界中の原油価格が上がり 下がれば世界中の原油価格も下がる 大雑把に言えばこうした構図になっているのだ。
ところで ご存知の方も多いと思うが ウオールストリートと言えば ユダヤ系の企業の存在感が非常に大きいところである。つまり OPECの大半はイスラム系の国であるが そこで生産される原油の価格は ユダヤ系の影響力の強いニューヨークで決められているという まことに皮肉な状況にあるのだ。
ここで取引されるのは米国産原油だけだが 米国が石油需要の約半分を輸入しているため 輸入石油の需給状況が米国産原油の価格を決める時の大きな要因となる。
これに 米国内の需要動向が加味されて その時々の取引価格が決められていくことになる。 取引量が膨大であるため 価格に対する信頼度が高く したがって産油国が自国産原油の価格を決めるに際して これを指標としているのである。
商品取引所における取引は 先物取引であるから 将来の見通しに対して敏感に反応する傾向がある。このため 実需の動向より早く上下する傾向が強い。 上がるのも早く 下がるのも早い。 また 現物取引のようになだらかな曲線を描くのではなくかなり急激に上下することが多い。 一見価格の動きが非常に激しく見えるが 一定の期間でならしてみると 現物の場合とそう違わないのである。 結果としては 実際の需給の有様を 最も正直に反映しているのが先物取引であると言われている。
(一本杉)