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「小泉津波の引き潮」 2007年08月21日更新

先の参議院選挙で民主党が圧勝した。前回の郵政改革選挙といわれた衆議院選では惨敗した民主党だが、あれは自民党の内輪もめが発端となった突然の総選挙であったため民主党として事前の準備ができなかったこと、また改革を旗印にした小泉首相に浮動票がどっと流れたことによるもので、次の選挙では民主党が大幅に票を回復するであろうことは容易に想像できたのである。二年ほど前の「民主党の惨敗」と題した小論でもこのことは明確に記されている。

それにしても阿部内閣のだらしなさを何と表現したらよいのだろうか。発足してほんの数ヶ月の間に閣僚の相次ぐ信じられないような失言、金銭不祥事そして遂には自殺者まで出したこの内閣は史上最低といってもよいだろう。自民党にはこれほど人材がいないのかと国民は思うだろうし、ましてや官僚には馬鹿にされてもいたし方あるまい。おそまきながら今月中に内閣の改造を行うようだが、はたしてどれ程の陣容が整うのだろうか。

こうなると自民党としては衆議院選挙で国民の信を問う必要がありそうだが、現況からすればその時期が早いほどより大きく負けることになりそうだ。前回の解散選挙のときに自民改革派を支持した層が雪崩をうって民主党支持に変るだろう。だからといって時期を延ばすと参議院で過半数を割った自民党としては、難しい政局運営を続けなくてはならなくなる。どう考えても自民党が立ち直るのは容易ではない。

そこで民主党だが、もし次の衆議院選でも大勝すれば政権獲得の可能性もある。それが二大政党の時代の幕開けとなるのであれば、国民も反対しないだろう。しかしそのためには民主党は日本国の運営に係わる明確な将来ビジョンを自民党との対比の上で国民に説明する義務がある。民主党の弱点はいつまでたっても寄り合い所帯とのイメージを払拭できないでいることだ。これが続く限り、民主党は政権党には成れないであろうし、もし成れたとしてもその政権は短期で終るだろう。目先の戦術にこだわるのもわかるが、本当に政権党を狙うのであれば長期の戦略をうちたてなければならない。

(一本杉)

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