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「プロ野球の裏金問題」 2007年05月08日更新

前回の本欄では高校野球界に関してその姿勢に疑問を呈したが、最近の新聞に多数の学校が野球部選手に対して特待制度をもうけて何らかの資金を提供している実態が報道されている。昔から特待生という制度はあったが、これは学校の成績が非常に優秀であるにもかかわらず経済的理由で進学できない生徒に必要な資金を提供するものである。では同じような理由で才能があるにもかかわらず野球を続けられない生徒に必要な資金を提供するのが悪なのかといえば、これは簡単にそうだとは断じられない。高校野球界でこれを禁じているのだからルール違反に違いはないが、よく議論する必要がありそうである。特に野球で有名であり実績も優れている学校の多くが特待制度を長期にわたって実施してきている現実が明らかになっているのを見れば、高野連は怠慢のそしりを免れまい。

これがプロ野球の話しとなると、このような資金を裏金と呼ぶ。三年ほど前に現在「楽天イーグルス」に在籍している一場投手がアマチュア時代に複数の球団から資金の提供を受けていたことが明らかになり各球団のトップが退任を余儀なくされた事件があったが、これが裏金を表面化させた最初である。その後「横浜ベイスターズ」の那須野投手がプロ契約以前に5億円を受け取っていたことが判明した。さらには「巨人軍」の野間口投手が同じく10億円を受け取っていたと某週刊誌に報道されている。10億円が正しいかどうかは別にして相当の金額が渡されていたのは間違いあるまい。

プロ球界には入団契約金は1億円を上限とするという協定がある。これは球界が自ら取り決めたものである。にも拘らずこのように協定破りが慣行化している事実をどのように考えたらよいのだろうか。もし守れないのが現実であるというのであれば、このような協定は破棄すべきである。そして契約金額に関しては一切制約を設けず、その代わりにアメリカのように年俸総額に上限を設け、これを上回った球団に対して富裕税を課して、それを貧乏球団の補強費に回すのがよいのではないか。野球先進国のアメリカでは大抵のことは経験済みであり、その都度に対処法を編み出している。野球技術ばかりでなくこうしたこともアメリカから学んだらどうだろう。そしてもう一つ、アメリカでは嘘の申告をした場合の罰は重い。これこそ日本の球界がまず学ぶべきことだろう。

それにしても各球団のお金の使い方は下手である。一場投手にしても、那須野投手にしても、そして野間口投手にしても、その働きは契約時に支払った金額に遠く及んでいない。やはりスポーツは基本的にハングリーゲームであり、このゲームに参加する前にいとも簡単に大金を手にすると心にゆるみが出て、その後の鍛錬に欠けるところがでてくるのではないか。契約時に大金を払うよりも入団後の成績に応じて大金を払うのが理にかなっていると思う。現役としてしっかり働いている選手の年俸をもっと増額すべきであろう。

(一本杉)

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