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「宴会は終った」 2008年09月25日更新

Lehman Brothersは倒産しAIGは9兆円の政府資金を受けてアメリカ政府の管理下に入ることになった。
他の大手金融会社もかなりの損失を蒙っているはずだし まさにWall Streetが大地震に見舞われその津波が世界中に押寄せている様相だ。ことの発端はサブプライムローンが焦げついて破綻したことにある。このローンは不動産バブルが続いている限り多くの人々に富をもたらす素晴らしいものであったから、このローンを組み込んだ証券はWall Streetの超一流の証券会社の手によって世界中に売りまくられたようだ。しかしバブルの終焉と同時にこれが悲劇の始まりとなった。この証券がまったく売れなくなり価値が激減したのである。

やさしく表現すると、アメリカの金融関連の会社が世界の主要同業会社を集めて宴会を開きサブプライムローンという美酒に酔いしれていました。このようにおいしいお酒は滅多にないので、皆は先を争ってこのお酒に群がりすっかり酔っ払ってしまいました。ところがこのお酒には毒が入っていたのです。殆んど全員が腹痛や嘔吐を起し入院する羽目となり中には死亡する人もいました。このお酒をちょっと調べれば毒が入っている可能性が分ったはずなのですが、なにしろこのお酒は美味しいし世界の頂点にいるWall Streetの金融関連会社の主催なので誰もそのようなことを考えなかったようです。この宴会が終ったときは惨憺たる有様でした。

大体上記のようになります。さてではこれから何が起こるのだろうか。この事件による損害は全世界で90兆円に及ぶという発表がなされていたが、こうした場合実際の損害額は発表を大きく上回るというのが通例である。
それまでは世界的なインフレ基調に伴う余剰資金が商品市場に流れ込み石油をはじめとする地下資源や農産物の価格を暴騰させていたが、もうこれ以上価格を押し上げる力はおそらく残っていないはずだ。これからは暴騰した価格がどこまで落ちて止まるかが焦点となる。さらに全世界の経済規模がかなり縮小するのは間違いなく実経済においても将来の資源や生産財を暴騰の過程で手当てした向きは相当の打撃を免れまい。商品市場取引は反対取引を行うことにより直ちに清算できるが実経済ではそうはいかない。これがやがてじわりと効いてくるだろう。株価もおそらく世界的に長期に亘って低迷すると思う。

暗い話しばかりで申し訳ないがこれが現在の世界の実態である。躍進してきた中国経済とて例外ではありえない。
株価バブルで株投資に夢中になった人が随分と中国にはいるらしいが、こうした人たちは現在どうしているのだろうか。これから悲劇的な話しが順次聞こえてくるだろう。幸い日本の会社はWall Streetの宴会でも隅の宴席にいたようで毒酒の被害は比較的に軽いようだ。90年代のバブル崩壊後の長い不況期を耐えてきた経験を上手に生かして、日本企業には世界各国の指南役になってほしいと思うのである。

(一本杉)

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