「原油価格の今後は?」 2009年06月23日更新
昨年12月の「どこまで落ちる?」と題した小欄で究極の底値を30ドルと置き現実的な底値圏を40-50ドルと予想したが、その後現在に至るまでの期間でこれを検証すると、もっとも安い価格が34-35ドルでありその後40-50ドルの価格が続いたから、どうやらこの予想はぴたりと当ったと言えそうである。だが40-50ドルの価格が二年ほど続くとした予想は完全にはずれたようだ。なぜ底値圏が二年ほど続くと考えたかというと、サブプライムローンの破綻に端を発した金融危機により相場を支える資金が大幅に減少しその回復には少なくとも二年程度は要すると予想したからである。しかし現実には先週末の時点で原油価格は70ドル程度にまで回復しており小欄の予想は完全に外れたと言える。
なぜ外れたかを考えてみよう。相場を支える資金が大幅に減少したことは間違いない。GMを筆頭に株式を保有していた向きが大損害を蒙ったことはたしかであり、また各種証券を保有していた向きもそれ以上に損害を蒙ったことだろう。世界各地で不動産に投資していた向きも同様である。このように大手投資家がその資産を急激に減らした(ただしゼロになったわけではない)にも拘らずなぜこれほど早く原油価格が上昇に転じたのか。おそらくその答えは残った資産の使い道が狭くなったからではなかろうか。NYの石油市場は膨大な扱い量を誇る市場であり大量の資金を自在に操るにはこれを置いて他には無いといってよいほどの規模を持っている。したがって大量の資金を動かしたい向きにはもってこいの市場なのである。しかも石油は金などと違って毎日消費されて無くなっていく。つまり需要が滞る心配はしなくてすむのだ。
こう考えると残った資金が石油市場に向かったとしても当然と言えよう。彼等が小欄と同様30ドルを究極の底値と見て40-50ドルを底値圏と見ていれば尚更である。小欄の間違いは石油市場を他の市場との比較において位置づける視点を持っていなかったことにある。深く反省する所以である。ともあれもしこの推察が正しいとすると投資の対象は世界の経済の回復と共に広がっていくことになる。そうなれば石油市場に集まっている資金はやがて分散されるだろう。この時点で石油市場はひとまず天井を打つことになる。
では天井価格はいくらだろうか。これも無謀を覚悟で推測するとしよう。筆者のささやかな経験をかえりみると、価格が頂点から下落し底を打って反発する場合その上限は大体頂点の半額である。今回の原油価格の頂点を150ドルとおけば底値からの反転の上限は75ドルということになる。つまり現在の原油価格はこの上限にかなり近いところにあると言えるのではないか。
(一本杉)