「民法772条」 2007年04月03日更新
殆んどの人がこの条文が何を規定しているのか知らなかっただろう。最近になって子供を生んだ母親が夫の子供であると申請したが、離婚暦があったために役所が772条を理由に受理しなかったことがマスコミに大きく取り上げられたのでかなり広く知られるようになった。ここにその条文を転載しよう。
第3章 親子 第1節 実子
① 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
② 婚姻成立後から200日後 または 婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
このように短い条文であるが、目をひくのは何れの項目も推定するとなっていることである。これは法律の規定としては珍しいものだ。なぜそうなっているかといえばこの法律が明治時代に規定された古い物だからのようだ。つまり本当の父親が誰であるかを確認する方法が無かったために推定を規定したものと思える。
①項では、妻の不倫によって生まれた子供でも夫は自分の子供と認めよと読めるが、同時に夫に対して妻に不倫などをさせてはいけないと警告しているようにも読める。②項では、結婚から200日以上経って生まれた子供は夫の子供であり、また離婚から300日以内に生まれた子供も同様とするものだが、これも当時の常識的懐胎期間を前提にしたものであまり科学的ではない。
要はこの条文が時代遅れになっているのである。科学的に親子関係を確定できる現代に於いてこうした時代遅れの条文に国民が振り回されているのはおかしなことではないか。こうした条文は一日も早く改正すべきであろう。親子関係の確認は科学的な方法でおこなうこと、そして関係者全員が同意している場合にはその親子関係を認めることが妥当だと思う。法律は国民に余計な負担を与えることなく、国民が安心して暮せる社会の構築に役立つものでなければならない。
(一本杉)