「民主党人事に関して」 2007年09月19日更新
民主党が岡田・前原の両元代表を副代表に指名した。これにより小沢代表と鳩山幹事長とならんで党内の各派閥の長が党の指導層にそろったわけで、挙党体制ができあがったと民主党は言う。たしかにこの人事を見たところではその通りと思えるが、なにかしら釈然としないものを感じるのも事実である。
前原氏は以前から集団的自衛権には賛成であると公言して憚らなかった人物である。ところが民主党は国会における自民党との重要な争点のひとつとして、テロ対策特別措置法延長を挙げこれに反対する立場をとっている。この法律に基き現在自衛隊はインド洋に展開している米軍その他の艦船にたいし補給業務を行っているが、これら艦船は国連の決議に基いて展開してしるのではなく米国が国連決議なしに始めたイラク戦争に専ら従事しているのだから、これは集団的自衛権の行使とみなされるべきで憲法違反であるというのがその主張である。
そこで疑問に思うのは、民主党が集団的自衛権の行使に反対であるのなら、これまで賛成論を公言してきた前原氏はその持論を取り下げたのだろうかということだ。もしそうなら前原氏はその旨をはっきりと表明すべきであり、そうでないなら今回の副代表就任は辞退すべきであったと思う。民主党としてこの辺に関してなんら言及していないところをみると、どうやら民主党はあえてこの件には触れないで次なる選挙に必勝を期して臨むための体制作りを急いだと見える。はたしてこれでうまく行くのだろうか。
つまづき続き安倍首相が相手ならば、おそらく次回の衆議院選挙でも民主党は圧勝できただろう。だが安倍首相の突然の辞職により自民党の総裁選挙が始まり、福田・麻生という役者同士の一騎打ちとなってテレビなどのマスコミ露出度が格段に高まっている。この総裁選は自民党内の行事であり国民が投票するわけではないのだから本来街頭演説をするのはおかしいのだが、これも次の選挙を視野に入れての宣伝効果を狙ってのことだろう。現在国民の目はここに集中しており、民主党関連のニュースはまったく出てこなくなった。これは選挙を前提にすれば、民主党にとってまことに不都合な事態なのである。
おそらく次期首相は福田氏となるだろうが、福田氏は非常に慎重な性格の持ち主であるから安倍首相のようなヘマはしないだろう。となるとマスコミ露出度の格段の差が民主党にとって不利に働くことは容易に想像できる。つまり民主党がこれまで考えていたような楽勝は難しくなったと考えてよいだろう。今回の人事が墓穴を掘るようなことのないよう充分に心する必要がある。
(一本杉)