SS経営、生き残りかけた戦い 収益低迷、倒産増 2002年04月10日更新
SSのマージン低下によって、SSの生き残りをかけた戦いの姿がさらに明確になってきた。
業界が策定したいくつかある選択しの中に、ついに「撤退」も視野に入ってきた。
ガソリンの利益のみには依存できないSSの現状。続けるには業態を変えるか?それとも撤退か?ふたつにひとつしかない。そこへ行く前に倒産に追いこまれるSSがこのところ増えている。
帝国データバンクの調査によれば「ガソリンスタンド」の倒産は今年になって急増している。
今年1月は11件(負債総額38億8300万円)、2月は10件(同、41億4200万円)だった。
昨年12月が1件(13億7000万円)、11月が3件(3億1500万円)であり、昨年で倒産件数の多かった2月7件(17億1000万円)、3月6件43億3000万円)、10月6件(12億8500万円)だったところから見れば件数、負債恭順ともに今年になって増大している。
これはガソリンスタンド専業の倒産件数で、本業が別にある企業は含まれていない。したがってSSそのものの倒産件数はもう少し多いというのが実状のようだ。
SSはなぜ倒産するのか?マージンが軒なみ3分の1になってもこの5年間は耐えてきたSSがいま倒産している。この5年間の、ことに最初の頃の倒産原因には「放慢経営」「財テク失敗」というのが主たる地位を占めていた。バブル期に銀行の融資拡大路線に乗って借金を増大させたところがバタバタと倒れていった。しかしグロスマージンが3分の1になって5年。その間耐えてきた企業がいま倒産するケースはこれと異なっている。
「現在は“不況や倒産”が主流。つまり賑売不振で利益が出ない。そこへ以前借りている運転資金の返済が重なっている。銀行自体が危ない状態だから貸さない。信用組合クラスも貸し渋る。その結果金利の高いノンバンク、消費者金融に手を出しで倒産するというケースがこのところ増えている」(帝国データバンク情報・小俣直哉氏)。最近のSS倒産ケースを見てみよう。
鹿児島県の燃料卸売業・久保産業は1月31日2度目の不渡りを出し任意整理に入った。負債総額62億円。昭和36年創業でガソリンスタンドの経営を主体に、積極拡大路線を歩み、官公庁筋・農漁業などへ卸売を拡大、地元の大手業者となった。ピーク時2001年2月の売上高は133億円。
しかしSSの店舗開発などの設備資金を金融機関の借入かに頼り、金利負担で妙味薄の決算が続いた。取引金融団の支援を得ていたが、販売不振により慢性的資金不足に陥り、今年初め取引先が倒産して5億円が焦げ付き急速に資金繰りが悪化した。
大正10年創業の東京・宮村石油店(江東区)は2月26日に銀行取引停止となった。負債は7億円、93年には大手石油会社の資本参加を受け、ピーク時には給油所21ヶ所、系列販売店16社を運営し96年9月期の売上高は32億円。98年3月に大手石油会社からリースしていた給油所7ヵ所を返却したため売上げが減少、仕入れ割引(リベート)もなくなり大幅欠損から債務超過に陥った。
また大分の柏原商店(明治2年創業)は3月1日に大分地裁から破産宣告を受けた。ピーク期7店舗を経営、98年1月期の売上高は34億円を計上。不況の影響と同業他社との競争激化から収益は低迷、2001年には長年取引のあった大手石油会社との特約店契約を解除、3店舗を残し別グループ下での経営を続けてきたが業績は回復せず負債は8億円。
これらのケースの中で注目されるのは、大手石油系列からの離脱によって、さらに経営状態が悪化していること。元売りとは様々な交渉の中で苦況を脱するために、“別のおいしい方法”を探ろうというのは当然だが、全産業が冷え切っていろ時代に“おいしい”花園は簡単に見付からない。その現実を冷静に受け取め、まず経営意識を変え自社改善への道を着実に模索することからSS改革ははじまる。