多様な新業態化 「集客力」を活かし展開 2002年05月21日更新
ガソリンマージンのみに依存した従来型SS経営に根本的な変革がはじまっている。
これは、戦後ずっと“規制”に守られる形で高いマージン率を欲得してきた石油流通を“国際化”しようという動きからはじまった。
石油流通業は「石油製品」という国際的単一商品を扱う業態だが、石油製品価格そのものは早くから国際化されていた。
「日本の石油製品価格は世界的に見ても安い。原油価格は毎日の相場できまっているし、輸入価格も基本的にはガラス張り。市中のガソリン価格がいま100円/Lとすると、税金分は53円80銭、残りが製品価格だから、この水準は世界的に見ても安い」(Jオイル・エクスチェンジ亀岡剛氏)。
だから近隣に巨大精油設備を保有した韓国石油(SE)のような存在があっても簡単には日本に大量輸入される状況にはない。しかし、SEをはじめ韓国・中国の精製企業はその機会をうかがっている。
こんな中で日本の元売が数杜に集約されたといっても、現有設備をフル稼働させれば市中に玉があふれ、たちどころに市中価格は下落する。そういうデフレスパイラル的な状況に落ちいっているわけで、自主減産以外の妙手は当分みつかりそうにもないのが現状。
元売各杜は国際的にみても安い製品価格の中で何とか量的拡大をはかり利益確保をはかっていかなければならない。ひとつ気象条件が狂い、ひとつ相場が狂ったら大痛手を食いかねない素地はいまも変わらない。
一方小売店であるSSは、また店頭での従来型SS同士、フル対セルフSS、セルフSS同士といったさまざまな価格競争にさらされてガソリン販売によるマージンは年々低下する傾向にある。
わが国の石油流通の向かう方向はそういう状況のもとで自らきめられてくる。
もともとわが国の石油流通はガソリンマージンに大きく依存する経営の中にどっぷりつかっていた。しかし経済高度成長時代は終わりを告げ、ガソリン需要が著しく拡大する見通しもない中で、特石法が廃止され、ガソリン価格、ガソリンマージンは大幅に低下した。一方では自動車の低燃費化が進み、ガソリンマージンが再びかつてのように拡大する見通しはない。石油流通、ガソリンマージンのパイは縮まった。
特石法廃止はわが国石油流通のグローバリーゼーションのために始まった。それは5~6年の準備期間を経て、ついに本番となったのだが、石油流通分現状に直面した関係者には「“国際化”とはこういうことだったのか?」という思いが今更ながらに強いにちがいない。
もともと欧米の石油流通はガソリンマージンへの依存度は低い。日本と比べて「油外収益」の割合が高く、むしろ燃料油以外の物品販売やサービスが収益の中心。それに併行してガソリン販売を行なっている形態が多く、日本の石油流通も“グローバル化”して、ガ ソリンマージンに依存出来なくなれば、必然的に欧米型ビジネスに変わらざるをえない。それは物理現象的な結末だ。
既存SSの中にも「もう10年近く前からガソリンマージンはいずれ欧米なみに下落すると言われてきた。ガソリンで儲からなくても、ちゃんとしたSSには“集客力”がある。それを活かせればこれからのSSはおもしろい」(ヤマヒロ山口社長)という積極的な見方もある。こういうSSは独自の戦略をもち、独自の社員教育を熱心に行なっている。
確かにここに来て、日本の石油流通の多くの段階で「ガソリンスタンド」から「業態型店舗」へ変貌を遂げようとする動きが活発だ。元売の販促・指導ということもあるが、実にさまざまな業態が出現しつつあり、既存SSの変身作戦はカー関連事業とセルフSSの併設など各地で展開中だ。最終的にどのような業態が生き残るかは、いまのところ不明だが、それはセルフSSが完全に定着できるかどうかを含めて今後のSSを占う、ひとつの試金石でもある。