異業種セルフ増 石油流通に“新業態”続々 2002年05月23日更新
SS新業態をめぐる動きは実に多彩。ショッピングセンターにセルフSSを併設して15店を展開しているジャスコの例は、東北地方のジャスコ店舗内の駐車場を活用してセルフSSを設置したもの。
またJAのようにコンビニエンスストア(草加)で、セルフSSを設置、コンビニとセルフの一体化店舗を最初から開発して相乗効果をねらったもの。
コンビニチェーンAM/PM(Jエナジーの子会社)でも既存のSS敷地を利用してレストラン、コンビニ、ドラッグストアなど複合店舗にセルフSSを併設した新業態店を設置したもの。
最新式カー・メンテナンス工場にセルフSS、セルフ洗車を設置したATAはフランチャイズ方式で店舗展開している。店舗の核となるのはアメリカ式カー・メンテナンス工場。従来の整備工場のイメージと比べると見違えるほどきれいで、パーツ料金や作業料金なども明確に表示されており、このヤード内にセルフSSを併設してフライチャイズ展開しようというもの。
セルフ方式の認可によって、こうしたガソリン流通の“新しい業態”がはじまっている。これまでも、従来型SSにコンビニなど店舗を併設するケースはあった。これはあくまでもSSの収益上昇をねらったもので、いわば“油外”業態だった。“はじめにSSありき”のコンビニなど新業態では現実にはあまり大きな成功を収めているとはいえなかった。
しかし、以上にかかげたような新業態店舗は少しちがう。中心とる、ショッピングセンターやコンビニやカー・メンテナンス工場があって、そこにセルフSSを併設している。セルフSSの認可によって初めて可能になった、異業種進出型の新業態だといえる。
平成13年末には全体のセルフSSは1,206店になったが、ショッピングセンターなどに併設されたが“異業種型”のセルフSSは69店となっている(石油情報センター)。ショッピングセンターなど大規模店舗に併設したSSの数はまだ少ないが、ショッピングセンター利用客への利便性の提供がSSの業態開発を推進していることも事実。異業種からの進出はひとつのきっかけになる。
商社系の動きもその中のひとつ。商社系SS運営の伊藤忠エネクスは今年相次いでふたつの自動車関連事業をスタートさせた。
ひとつは車検専門の大手チェーン「ホリデー」と提携した「カーライフホリデー事業」。これは「東検」の専門店をフランチャイズ方式で全国展開しようというもので、必ずしも傘下SSネットワークの念頭においてはいない。
傘下SSの中で、フランチャイジーの核として参加したいところには参加させるが、店舗はSSとは別のところにおく。7月にはその中心となるエネクスオート関東を設立、先行しているカーライフ中四国とともに、“ホリデー車検”のフライチャイズ全国展開に乗り出す。
もうひとつは中古車買取の大手チェーン「ジャック」と提携して進めている「JES」(ジャック・フランチャイズ・ステーション)。これも従来の傘下SSは情報取次店として参加するものの、中心となるのはサテライトによって結ばれた独立専門店を想定している。
伊藤忠エネクスはこれに先立ち、組織も「カーライフ事業部」(ガソリン、SS)を「ホームライフ事業部」(LNG)とエンドユーザーを意識したものに変更した。
これまで商社系最大のSS保有数を誇り、ガソリン拡販の最前線を走ってきた“チューネン”は“ガソリン”から“自動車関連”へと大きくシフトした。
「新車購入から廃車まで」の一切のビジネスの中に新たなビジネスチャンスを見出し、その第一弾がこのほどスタートしたふたつの自動車関連事業。既存の傘下SSの一部はこれに組み込まれるが、必らずしも既存SSをベースにした事業ではなく、「はじめにSSあ りき」ではない。“発想の転換”からSS運営の大手商杜系が生み出そうとしている新業態だといえる。