原子力保安院、出光事故報告書を概ね了承 今後は立入検査で他社直脱にも調査要請 2002年08月21日更新
経済産業省の原子力安全・保安院保安課は16日、4月15日に起こった出光興産(株)北海道製油所(苫小牧市)の重油直接脱硫装置の火災事故に関する出光興産の事故調査委員会報告書の内容の評価と同保安院の対応について、その原因調査・再発防止策・出光興産の全社的対応策等に対して「妥当なもの」と評価しつつも、今後の実施状況等については立入検査するとともに、事故を起こした直接脱硫装置を有するその他のリファイナリーに関しても、直接の事故原因となった「行き止まり配管の腐食等」について調査し、報告することを求めることを内容とした、次のようなコメントを発表した。
<報告書の内容についての評価>
1.事故原因については、一部の条件について推定を行った点があるものの、シミュレーション等を活用して評価を行っており、その結果は妥当であると考えられる。
2.当該装置の再発防止策として、事故の原因となったバイパス配管を撤去することは、事故の再発を防止する観点から、妥当であると考えられる。
3.全社的な対応等について、社内の規定や組織を改めるとしているが、その内容については妥当であると考えられる。今後、その実施状況について、当院として立入検査等により確認する。
<原子力安全・保安院の対応>
1.今回事故が発生した重油直接脱硫装置を設置している事業者に対し、報告書に記載されている事故原因及び再発防止策について周知するとともに、重油直接脱硫装置の配管のうち、今回と同様の腐食が発生する可能性のある行き止まり配管について、極度の腐食等、配管に異常がないかどうかについて調査を行い、その結果の報告を求める。
2.出光興産(株)北海道製油所は認定完成・保安検査実施者であり、当省として、認定の取消しの要件に該当するか否かを判断する必要があることから、立入検査を行った上で処分の要否を最終的に判断する。なお、北海道庁の立入検査の結果においては、高圧ガス保安法上の法令違反はみられなかった。
出光興産の事故調査委員会報告書では、事故原因を「重油直接脱硫装置のバイパス配管の一部が、水硫化アンモニウム(NH4HS)によって腐食・開口し、そこから水素ガスが漏洩し、火災に至った。腐食に至るメカニズムについては、当該配管内で水硫化アンモニウムの濃度上昇、温度上昇、ガス旋回流及び乾湿の繰り返しが起こり、それらの相乗効果で局所的に腐食か進んだ、としている。
また、再発防止策としては、(1)事故原因となったバイパス配管の撤去、(2)装置全体に対しての腐食の観点からの再確認と評価、(3)全装置の総点検、(4)腐食環境悪化を重点とした改善の推進及び運転員の技術力の向上、(5)異なる分野の高度専門技術者からなる特別チームの編成とシミュレーション技術を活用しての設備検査の強化、(6)出光興産と出光エンジニアリングに分かれている全国製油所の保全組織を統合、一元的組織に再編して、運転部門と保全部門の連携を深める-などを同調査委員会では明らかにしている。