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低硫黄軽油の販売とコストアップ回収に戦略は? 2002年09月13日更新

元売大手8社は9月2日から東京都内の144SSで、硫黄分を現行の10分の1の50ppm以下に減らした低硫黄軽油を発売する。昨年秋、石油連盟が東京都のディーゼル車排ガス浄化対策の要請に応じたもの。来年4月には都内のSS販売軽油をほぼ全面的に低硫黄タイプに切り替える。国の規制も2004年度には50ppm、2008年には10ppmに強化される。低硫黄にすればPMの発生が抑制でき、NOxを除去する触媒も劣化が防げる。
 軽油低硫黄化のために石油各社はここ数年脱硫装置の反応塔増設、触媒交換・性能向上などの投資を続けている。経済産業省の設備投資調査によると、石油32社ベースで2000~2002年の3年間に194億円投資している。定期修理などの際に費用化されるものもあるから実際にはもっと多いはずだ。装置の固定費だけでなく触媒や水素のランニングコストを入れると、低硫黄軽油1Lあたり普通軽油に比べて15~20円のコスト高になる。
 東京都は来年3月までの販売量に対し10円を上限に助成する。だが、低硫黄軽油が普及するにつれて相当のコストアップになり、この回収が業界の大きな課題になる。軽油の販売価格も上げなければならないが、環境対策とか規制強化というだけでは価格を上げることは難しいだろう。そこには戦略が必要である。ディーゼル車はガソリン車より燃費効率が3割ほど高く、地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出が少ない。それに低硫黄化により酸性雨の原因になるNOxと、人体に有害なPMが除去されれば、ディーゼル車は環境的、社会的に極めて効率的な自動車になる。環境意識の高い欧州では乗用車と小型トラックの4~5割がディーゼル車になっている。石油業界も低硫黄軽油の値上げというより、迂遠なようでも低硫黄軽油の宣伝に最近減少している軽油乗用車の再評価を併せて推進するのが有効だろう。

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