原発事故の背景と巨大国家プロジェクトの持つ問題点 2002年09月27日更新
東京電力が多年にわたり原発の自主点検データを改ざんし、トラブルを隠蔽していた問題は、元経団連会長の平岩外四相談役、南社長ら五名の首脳が引責辞任をする事態になった。東電側に直接の責任があるとしても、点検・検査体制を改善し、責任者を更迭しただけでは真の問題解決にはならない。
原発の導入が始まったのは1954年で既に50年の歴史を持つ。2001年度末で稼働中の原発は52基、出力4,574万KW、発電設備全体(10電力)の19.9%、発電量では3,176億KWh、34.1%、LNGが26.1%、石炭20.1%、石油は7.5%で、原子力はわが国の電力の三分の一強を占めるまでになった。
原発には経済産業省、電力会社、原子炉・発電機器メーカー、建設ゼネコンを含めた巨大な「官・電・産複合体」が存在し、その維持のために原発は造り続けなければならない。高速道路やダムと同じく、日本経済の右肩上がりの時代に成立した巨大国家プロジェクトとなっている。通産省は初めは「原発は安全で安い」と宣伝していた。次第に事故が発生するようになり「安全」は引っ込めたが、現在も「安い」と主張している。1KWh当たりの発電コストは原発5.9円、LNG6.4円、石炭6.5円、石油10.2円だという。この計算はインフラやバックエンドのコストを見込まない意図的な低コストで信用されていない。最近は温暖化防止には原発が必要だと主張しているが、CO2を減らすために放射能を増やすものだとの批判がある。
このような原発推進姿勢が電力会社に無事故を強いる圧力となり、事故を隠蔽する結果になっているといえる。米国はスリーマイル島事故の後、約20年原発建設を中止し、建設・運転・管理を前面的に見直し、コンパクトで効率的な原発を開発、建設を再開した。日本も大事故を起こさぬうちに新設を凍結し、技術および体制の総合的・根本的な見直しをする必要がある。