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「企業の健康」 2005年08月10日更新

先月の日経新聞の「私の履歴書」欄は、自転車部品の世界的メーカーであるシマノの島野会長が執筆されておられた。興味深い内容であったが特に印象に残ったのはその最後の部分であった。会社の将来を案じる中で、シマノの社風は是々非々であり、誰でも良いと思ったこと正しいと思ったことは発言できるので、これが続く限りあまり将来のことを心配する必要はないだろうといった内容と記憶する。

これを見て思い出したのが、二輪車から四輪車に進出して大成功を収めたホンダの創業者が自社の社風について述べていた言葉である。俗にワイガヤ経営と呼ばれるが、とにかく皆でワイワイガヤガヤやっているうちに良い知恵が浮んでくるのだという。
大部屋に集って皆で知恵を出し合うということだろうか。この話しと上記のシマノの社風とは真によく似ていると思う。伸びる会社の共通点と云えようか。

ところで上記の履歴書欄が終る頃、カネボウの元経営陣が逮捕されたというニュースが同じ新聞に載っていた。長期に亘って架空利益を計上して結果として巨額の損失を会社に生じさせたというものである。決算書で虚偽の報告を行うことは、投資家や 取引先を騙す行為であり重罪である。唖然とするのは、赤字決算を公表しようとする部下に対してこの経営者が「俺の立場はどうなる」と言って粉飾を強要したとされていることだ。 

企業を経営すれば必ず黒字で推移するわけではない。良い時もあれば悪い時もあるのが企業経営である。赤字になったら立て直しに真剣に取り組むのが経営者の責務であり、粉飾を強要するなどはもってのほかで、これは経営者とは呼べない。残念ながらこうした無責任な経営者はカネボウだけではなく日本中に沢山いるのが現実である。
ではなぜこういうことになるのだろうか。

ひとつ考えられるのは企業年齢である。企業も人間も若いときは柔軟な身体や頭脳を持っているが、やがて年と共に柔軟性が失われ硬化し壊れやすくなる。 人間の場合はこうなったら間もなく寿命に達するのでこの弊害が長続きすることは免れる。しかし、企業の場合はそうはいかない。 企業はその構成員が一様に悪化した病状に目をつむっても存在し続けようとするので、悪い状態が長続きすることになる。 

したがって企業の場合は、常に組織の若さを保つ努力をしなければならない。 それがシマノなりホンダなりの社風には現われているが、カネボウの経営者はこれを怠ったのではなかろうか。組織というものはちょっと気を許していると老化して行く。 
経営者自体が老化の過程にある年齢の人が多いため、組織の老化にそれほど敏感ではなくなることも原因の一つかもしれない。しかしそうであれば尚更、永続性を期待される企業として経営者は組織の若さを保つために全力を注入すべきなのである。これは期間利益の確保よりはるかに重要な企業経営者の仕事である。

(一本杉)



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